「改革」はなぜ難しいのか
年度ごとの税制改正と、大規模な「税制改革」には大きな違いがあります。
年度ごとの税制改正では、基本的に既存制度を前提として、税率を変更したり、控除を見直したり、新たな特例を設けたりすることが中心となります。
一方、大規模な税制改革では、税率だけではなく、所得課税、消費課税、法人課税など、税制全体の構造を見直すことになります。
改革の規模が大きくなればなるほど、既存制度との摩擦も大きくなります。納税者、企業、業界、行政、政治家など、それぞれの立場によって改革に対する利害が異なるためです。
当初は「税制を簡素化する」「公平な税制をつくる」「経済成長を促す」といった明確な理念を掲げていても、具体的な制度設計の段階になると、さまざまな例外や調整が加えられ、当初の理念から離れてしまうことがあります。
これまでにも、経済学分野の研究者から税制の簡素化についてさまざまな提言が行われてきました。しかし、税法の制度設計において、こうした提言がそのまま取り入れられてきたわけではありません。
税制は、単純に経済理論だけで設計できるものではありません。公平性、財政、政治、企業活動、国民生活など、さまざまな要素との調整が必要になります。だからこそ、税制改革は難しいのでしょう。
税制改革の道は遠い
日本では現在も、消費税をはじめとして、所得税、法人税、社会保障負担などを含めた税・社会保障制度のあり方が議論されています。
特に消費税については、税率を引き下げるのか、現在の税率を維持するのかという問題だけではありません。社会保障財源をどのように確保するのかという問題とも密接に関係しています。そのため、単純な税率論だけでは決着しにくい問題です。
大平内閣の一般消費税、中曽根内閣の売上税、そしてその後の消費税導入という歴史を振り返ると、日本の間接税改革がいかに政治的な困難を伴ってきたかが分かります。
アルゼンチンのように、経済危機を背景として抜本的な改革を掲げた国でも、当初の改革案をそのまま実現することは容易ではありません。
税制は、社会や経済の変化に合わせて見直していかなければなりません。しかし、大きな改革を掲げれば掲げるほど、現実との摩擦も大きくなります。そして、その摩擦を一つずつ調整していくうちに、当初描いていた「改革」の姿が変わってしまうこともあります。税制改革というのは、「遠きにありて思うもの」なのでしょうか。
税制のあるべき姿を考えることと、それを現実の制度として実現することとの間には、なお大きな距離があります。令和8年の消費税をめぐる議論も、そのことを改めて示しているように思います。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
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