アルゼンチンでも大規模改革に壁
税制改革の難しさを考えるうえで、アルゼンチンの事例も興味深いものです。
ハビエル・ミレイ大統領は2023年12月に就任し、深刻なインフレと財政赤字を抱えるアルゼンチンで、大規模な経済改革を掲げました。2024年の同国のインフレ率は200%を超える水準となり、通貨ペソの下落も続いていました。
こうした状況のなかで、ミレイ大統領は就任直後から大規模な改革に着手しました。税制についても、個人所得税や法人税などを含む大幅な改革案を議会に提出しました。
しかし、政府が当初示した改革案は、議会での審議や政治的な調整を経るなかで修正を余儀なくされ、当初の構想をそのまま実現することはできませんでした。
現在のアルゼンチンでは、法人税率は35%、個人所得税の最高税率も35%となっています。消費税に相当する付加価値税は標準税率が21%で、品目によって異なる税率も設定されています。財政の立て直しとともに、複雑化した税制を簡素化することも課題となっています。
大規模な改革を掲げたとしても、それを実際の制度として成立させるまでには、議会や社会との調整という大きな壁があります。これはアルゼンチンに限った話ではありません。
日本にとっても無関係ではないアルゼンチンの教訓
経済的にはさまざまな問題を抱えるアルゼンチンですが、日本にとっては重要な食料輸入国の一つでもあります。
アルゼンチンは、トウモロコシ、小麦、大豆などの重要な輸入先です。また、世界の穀物市場で大きな影響力を持つ穀物メジャーの一角であるブンゲ(Bunge)は、ブラジルやアルゼンチンなど南米産穀物の取り扱いで大きな存在感を持っています。
そのため、アルゼンチンの経済政策や農業政策、さらには税制の変更は、同国だけの問題ではありません。世界の穀物市場を通じて、日本を含む各国の食料価格や貿易にも影響する可能性があります。
税制というと、どうしても国内の税負担だけに目が向きます。しかし、経済や企業活動が国境を越えて広がっている現在では、一国の税制や経済政策が、貿易や資源価格などを通じて他国にも影響することがあります。
