「昭和41年に亡くなった祖父名義の土地を、自分の代で何とかしたい」。70代のFさんが相談に訪れたのは、60年近く放置されてきた実家の土地を整理するためでした。しかし、調査を進めると判明した相続人は、なんと34人。さらに、土地には生活保護を受給する弟さんが暮らし、固定資産税の滞納もありました。複雑に絡み合った相続を、どのように解決へ導いたのでしょうか。相続実務士・曽根惠子氏が、実例をもとに解説します。
祖父名義だった土地を、弟の単独所有へ
その結果、他の9人から協力を得ることができ、相続分を弟さんへ集約する道筋が整いました。これにより、昭和41年からおじいさん名義のままだった不動産を、現在住んでいる弟さんの単独所有にすることができました。
相続人が10人の共有状態にしてしまうと、売却する際にも多数の相続人の協力が必要になります。
弟さんの単独名義にしたことで、弟さんが所有者として土地と建物を売却できるようになりました。
さらに、弟さんは長年この家を自宅として利用していました。
そこで、要件を確認したうえで、居住用財産を売却した際に利用できる3,000万円の特別控除を活用できる形で売却を進めることにしました。
今回の売却価格は約1,500万円です。
取得費や譲渡費用なども含めて税務上の条件を確認し、譲渡所得税の負担が生じない形での売却を目指しました。
売却代金から固定資産税や立替金を精算
土地の売却と並行して、資金の精算方法も整理しました。売却代金約1,500万円のなかから、過去約5年分の固定資産税の未納分を支払います。
また、これまでFさんが立て替えてきた固定資産税や、司法書士による相続人調査などにかかった約20万円の費用についても精算します。
建物を売却するために必要となる費用があれば、それも売却代金から支出することになります。そして残った資金は、弟さんが現在の家を出たあとに暮らしていくための住み替え費用にも充てます。
今回、弟さんは生活保護を受給しています。
そのため、不動産の売却によって資産を取得した場合、生活保護の取り扱いについても注意しなければなりません。
資産の保有状況によっては、生活保護費の支給や、それまでに受給した保護費の取り扱いに影響する可能性があります。
そのため、土地の売却だけを進めるのではなく、行政とも確認しながら、弟さんの住まいや今後の生活を含めて考えていく必要がありました。
「売って終わり」ではなかった今回の相続
今回の相談で必要だったのは、単なる不動産売却ではありません。まず、約60年間放置されていた相続関係を調べ、34人にまで増えていた相続人を確認すること。
そのうち24人が相続放棄済みであることを確認し、残る10人の権利関係を整理すること。
さらに、相続分譲渡によって弟さんへ権利を集め、不動産を売却できる状態にすること。
そして、固定資産税の滞納やFさんの立替金を精算し、弟さんの住み替えまで進めることです。
司法書士、税理士、不動産の専門家、行政などが連携しながら、1つずつ問題を解決していきました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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