「これからも世話になる長女に、自宅を渡しておきたい」──。80代の母親からそう言われた60代のHさん。一方で気がかりだったのが、遠方に暮らす妹の存在です。母親の希望を叶えながら、将来の相続でもめる火種もできるだけ残したくない。そこで選択したのが「相続時精算課税」を利用した生前贈与でした。相続実務士・曽根惠子氏が、実例をもとに解説します。
80代母の生活を支えてきた60代長女
相談者のHさんは60代の女性。夫と一人息子の3人家族で、現在は夫名義のマンションに暮らしています。
Hさんの父親は30年前に他界。80代になる母親は、戸建ての実家で一人暮らしを続けています。
Hさんには5歳下の妹がいますが、結婚して他県で暮らしているため、頻繁に実家へ戻ることはできません。
そのため、母親の日常の買い物や通院の付き添い、自宅の管理などを担ってきたのは、主に長女であるHさんでした。
母親も、今後さらに年齢を重ねればHさんを頼ることが増えていくと考えていました。
「これからも長女に世話になるのだから、この家は長女に渡したい」
それが母親の希望でした。
「相続まで待つ」のが不安だったワケ
もちろん、母親が遺言書を作成し、亡くなったあとにHさんが実家を相続する方法もあります。
しかしHさんには、ひとつ気がかりがありました。
妹との関係です。現在は特に問題がなくても、相続が発生したあと、財産の分け方をめぐって気持ちが変わらないとは限りません。
「母が元気なうちに家を譲ってもらい、きちんと名義も変えておいたほうがいいのではないか」
そう考えたHさんは、生前贈与について相談するため、当社を訪れました。
母親から妹にも、自分の老後は長女に支えてもらうため、自宅を長女に渡したいという意向をあらかじめ伝えてもらうことにしました。
実家の評価額は1,850万円、預貯金は約1,000万円
母親の主な財産は次のとおりです。
・土地:90㎡、評価額約1,800万円
・建物:評価額約50万円
・実家不動産:合計 約1,850万円
・預貯金:約1,000万円
預貯金については、今後の生活費や介護費用、高齢者施設へ入居する場合の費用などに充てる予定で、相続時までそのまま残るとは限りません。一方、実家については、母親の意思が明確なうちにHさんへ移しておきたいという希望がありました。
そこで問題になるのが「贈与税」です。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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