せっかく買い手がついたのに…父が急逝、〈実家550万円〉を相続した姉妹を待っていた「売却できない」思わぬ事情【相続実務士が解説】

せっかく買い手がついたのに…父が急逝、〈実家550万円〉を相続した姉妹を待っていた「売却できない」思わぬ事情【相続実務士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

一人暮らしの父が急逝し、残された実家は550万円で売却することに。ところが、相続人のなかに20年以上音信不通の甥がいることが判明し、手続きは思わぬところで止まってしまいます。行方のわからない相続人がいる場合、遺産分割はどう進めればいいのでしょうか。相続実務士・曽根惠子氏が、実例をもとに解説します。

父が急逝。相続人の1人は、20年以上会っていない甥

相談者である長女のお父さんは、一人暮らしをしていました。ところがある日、突然亡くなり、長女は何から手をつければいいのかわからない状態で相談に来られました。

 

お母さんは数年前に他界しています。お父さんの相続人となったのは、長女と次女、そしてすでに亡くなっていた長男の子どもである姪と甥の4人でした。

 

本来、長男が存命であれば、長女、次女、長男の3人が相続人になります。しかし、長男はお父さんより先に亡くなっていました。

 

この場合、長男が受け取るはずだった相続権を、その子どもが引き継ぎます。これを「代襲相続」といいます。

 

問題は、長男が20年以上前に離婚し、子どもたちは元妻に引き取られていたことでした。それ以来、長女や次女はもちろん、お父さんも孫である姪や甥とはほとんど交流がありません。

 

連絡先どころか、現在どこで暮らしているのかもわからない状態でした。

姪とは連絡が取れたが、甥の居場所がわからない

長女は戸籍をたどり、姪の所在を確認することができました。事情を説明すると、姪は相続手続きに協力する意向を示してくれました。

 

ところが、もう1人の相続人である甥が見つかりません。

 

戸籍の附票などから住所を調べて手紙を送っても返事はなく、現地を訪ねても生活している様子がありませんでした。

 

遺産分割協議は、原則として相続人全員で行わなければなりません。

 

つまり、甥が見つからない限り、遺産分割協議を成立させることができないのです。

 

お父さんが残した実家も売却できず、預貯金の手続きも進められません。

 

その間にも、空き家となった実家には固定資産税や水道代などがかかります。庭の除草や家財の処分も必要です。

 

「このまま、いつまで何もできない状態が続くのでしょうか」

 

長女の不安は日に日に大きくなっていました。

実家550万円を売却

相続手続きを進めるため、まずはお父さんが残した財産と、長女たちが負担してきた費用を整理しました。

 

主な財産や入金は、

・実家の土地・建物:約550万円
・預貯金:約5万5,000円
・保険料や税金の還付金、生前の引出金、香典など:約74万円

でした。

 

一方、お父さんが亡くなってから、長女たちはさまざまな費用を立て替えています。

 

入院費や葬儀費用、法要、墓じまい、実家の残置物撤去、不動産の維持管理、戸籍取得など、細かな支払いも少なくありません。

 

相続では、遺産そのものだけを確認すればいいわけではありません。

 

誰が何を支払い、どの費用を相続財産から精算するのかを明確にしておかなければ、あとから相続人同士のトラブルになりかねないためです。

 

そこで領収書や入出金を1つずつ確認し、財産と支出を一覧にしました。

 

最終的に立替費用などを精算したあとの正味の相続財産は、2,772,643円となりました。

 

法定相続分で分けると、

・長女:約92万4,000円
・次女:約92万4,000円
・姪:約46万2,000円
・甥:約46万2,000円

となります。

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