裁判所はこれまで「現行制度は合理的」としてきた
裁判所もこれまで、現行制度の合理性を一定程度認めてきた。
たとえば、平成3年11月12日の仙台地裁判決では、類似業種比準方式について、上場株式の価格には景気変動や金融情勢、株式市場の動向といった企業外部の要因が反映されており、それらが非上場会社にも共通することから、上場株式を基準として評価することには合理性があると判断された。加えて、簡便であること、評価の恣意性を排除できるといった利点も認められている。
一方、純資産価額方式については、株式が会社財産に対する持分としての性格を持つことから、株式評価の基本的な方式として合理性があるとされた。
このように、これまでの裁判例は「どちらの評価方式にも一定の合理性がある」という立場を示してきたが、平成4年2月27日の名古屋高裁判決では、その時点では合理的であった通達だとしても、社会経済情勢の変化によって時代にそぐわなくなったのであれば、不合理性を修正するための改正はあり得るとの考え方を示している。
ある時点で合理的だった制度が、永遠に合理的であり続けるとは限らない。それが、今回の見直しをめぐる議論の核心である。
「時価」と「簡便性」をどう両立させるか
相続税法22条は、原則として相続財産を「時価」によって評価すると定めている。
判例上、この「時価」は、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われた場合成立すると認められる価額、すなわち客観的交換価値と解されているが、すべての財産に対し、その都度個別に市場価値の算定を行うことは現実的とはいえない。財産評価基本通達による画一的な評価方法は、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という観点から合理性が認められてきた。
非上場株式についても同様だ。国内には約300万社の法人が存在するなか、その一社一社についてDCF法などによる評価を行うような制度にすれば、税務行政も納税者も対応しきれない。

