(※写真はイメージです/PIXTA)

国税庁が「評価額を意図的に下げることによる極端な節税」が行われていることを踏まえ、非上場株式の株価算定ルールを見直す方針であることが一部報道で明らかになった。1964年に現行ルールが策定されて以降初の抜本的な変更となる見通しだが、実はこの「評価が安すぎるのではないか」という指摘自体は、すでに36年前の国会審議で交わされていたものだ。国税庁が有識者会議で示した具体的な株価圧縮スキームと併せて、株価算定方式の見直しに至る経緯を整理する。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

有識者会議では「類似業種比準方式の廃止」まで議論

2026年4月20日から始まった「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」では、類似業種比準方式そのものに対する厳しい意見も挙がっている。

 

第1回会議では、企業規模などの外形基準が評価額の圧縮スキームに悪用されているとの指摘や、非上場会社と上場会社では所有と経営の分離の有無などが大きく異なるため、上場会社の株価を基準に非上場株式を評価すること自体に問題があるのではないかとの指摘がなされた。

 

第3回会議では、類似業種比準方式には、税務執行の安定性・客観性・予見可能性を支えてきた歴史がある一方、将来収益や資本コストを使う企業価値評価手法は税務評価には適さないとの慎重論も示された。

 

一方、企業価値評価の実務では、M&Aなどを中心に、DCF法や類似会社比較法など、将来の収益力や市場における企業価値を踏まえて評価する手法が広く用いられている。

 

理論的な古さと、税務制度としての簡便さ。――類似業種比準方式は、まさにこの矛盾を抱えているのだ。

国税庁が明らかにした「株価圧縮」の実例

今回の議論を一気に現実的なものにしたのが、国税庁が有識者会議で示した具体的な株価圧縮スキームだ。

 

そこでは、現行制度の計算上の特性を利用して、非上場株式の評価額を大幅に引き下げる事例が示された。

 

代表的なものとして、以下のような手法が挙げられる。

 

①会社規模を変えて類似業種比準方式を適用させる

資産管理会社に上場株式を現物出資すると、会社の資産構成によっては株式保有特定会社などに該当し、株価が高く評価される可能性がある。

 

そこで、グループ内の別会社に従業員を移すなどして会社規模を大きくし、類似業種比準方式を適用できる状態をつくった上で、上場株式をグループ内で移転するという手法だ。

 

国税庁の資料では、こうした手法によって評価額を約100億円、税額を約55億円圧縮した事例が紹介されている。

 

②無議決権株式を利用した株主構成の調整

無議決権株式の大量発行・株主構成の調整をした上で、一定の株主について配当還元方式を適用させる余地をつくることで、財産的価値だけを孫世代などに分散するという手法だ。

 

国税庁資料では、評価額を約19億円、税額を約10億円圧縮した事例が示されている。

 

③航空機リースによる「意図的な赤字」

資産管理会社が借入金で中古航空機を取得し、これをオペレーティングリースに供することで、減価償却費を計上する。その結果として、利益や純資産が一時的に大きく減少し、株価が下がったタイミングで株式を贈与するという手法。

 

その後は、リース終了時の航空機売却などによって会社の利益回復を見込む仕組みで、国税庁資料では、評価額約10億円、税額約5億円の圧縮事例が示されている。

 

④株主構成を分散して配当還元方式を利用

さらに極端なのが、株主構成そのものを操作するケースだ。

 

創業家などの株主構成を調整し、それぞれの株主グループの議決権割合を一定水準未満に抑えることで、配当還元方式を利用できるようにする手法で、国税庁資料では、評価額を約98%圧縮した事例も示されている。

 

現在の制度では、配当還元方式は少数株主等の株式評価に用いられる特例的な方式だ。しかしこうした事例を見ると、問題は単に「類似業種比準価額が安い」という点にとどまらない。会社の実態を変えるのではなく、「評価額が低くなる会社の形」を逆算して作ることが可能になっている――そこに問題の本質があるのだ。

 

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