「日曜日、また行っていい?」毎週の恒例になった娘一家の来訪
「今度の日曜日、またみんなで行っていい?」
長女の奈津美さん(仮名・38歳)から連絡が来ると、恵子さん(仮名・66歳)はいつものように「いいよ」と答えました。
恵子さんは夫の正人さん(仮名・67歳)と二人暮らし。二人とも長く会社員として働き、夫婦の年金は合わせて月約31万円、預貯金は約5,200万円あります。住宅ローンもすでに完済しています。
現役時代から老後資金を準備してきた夫婦には、退職後にやりたいことがいくつもありました。
平日に温泉へ行く。混雑する時期を避けて海外旅行をする。正人さんは釣りを再開し、恵子さんは友人と観劇へ出かけるつもりでした。
「子育ても仕事も終わったから、これからは二人の時間だと思っていたんです」
ところが、長女夫婦に2人目の子どもが生まれたころから生活が変わります。奈津美さん一家は車で30分ほどの場所に住んでおり、当初は月に1、2回、週末に遊びに来ていました。
孫は現在7歳と4歳です。
夫婦にとっても、孫が遊びに来る日は楽しみでした。昼食を用意し、公園へ連れて行き、ときには近くのショッピングモールで欲しいものを買ってあげます。
しかし、いつの間にか来訪はほぼ毎週になりました。土曜日か日曜日のどちらかは、朝から夕方まで娘一家と過ごします。
「最初はこちらから『遊びにおいで』って言っていたんです。それがだんだん、週末は実家へ行くのが娘たちの予定になっていった感じですね」
食事も毎回5~6人分です。
昼食だけのつもりが夕食まで一緒になることもあり、そのたびに買い物の量が増えます。孫を連れて外出すれば、食事代や入場料を夫婦が払うことも少なくありませんでした。
経済的に払えない金額ではありません。夫婦が気になり始めたのは、お金よりも時間でした。
一度、正人さんが日曜日に釣りへ行こうとすると、奈津美さんから、「え、今週行けないの? 子どもたち楽しみにしてたのに」と言われました。
予定を変更する必要はありません。それでも正人さんは結局、釣りを翌週へずらしました。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上で仕事や趣味、地域活動など何らかの社会的活動を継続している人は61.4%。高齢期にも、家族との時間とは別に、それぞれの仕事や趣味、交友関係を持って生活する人は少なくありません。
「自由な老後って、どこへ行ったんだろうね」
ある日、正人さんがそうこぼすと、恵子さんも笑えませんでした。
