片道2時間半、運動会のあとも休めない「ばあばの一日」
「運動会を見るのは楽しみなんです。でも毎年、そのあと数日は何もしたくなくなるくらい疲れてしまって」
そう話すのは、65歳の恵子さん(仮名)です。2歳上の夫・隆さん(67歳・仮名)と2人暮らし。夫婦の公的年金は月約23万円です。
車で2時間半ほど離れた場所には、38歳の長女・美香さん(仮名)が夫と小学5年生、小学2年生の子どもと暮らしています。
恵子さん夫婦が毎年楽しみにしているのが、秋に開かれる孫たちの運動会です。朝から競技を見るため、当日は早朝に自宅を出ます。
美香さんからは毎年、「こっちで準備するから、何も持ってこなくていいよ」と言われていました。それでも恵子さんは、孫の好きなお菓子や果物、飲み物などを前日に買い込みます。
「せっかく会うんだから、何か持っていってあげたいんですよね」
運動会が終われば、そのまま娘宅へ。本来なら座って休んでもいいはずですが、美香さんが夕食の準備を始めると、恵子さんも台所に立ちます。
「今日は美香も朝から大変だったでしょう。夕飯くらい私がやるよ」
唐揚げを揚げ、サラダを作り、食後には洗い物まで済ませます。孫から「今日泊まっていって」と言われれば断れません。
翌朝は孫たちより先に起き、朝食の支度。昼まで一緒に遊んでから、再び2時間半かけて自宅へ戻ります。帰宅するころには、すっかり疲れ切っていました。
ある年は、翌朝になっても体の重さが取れず、その翌日に予定していた友人とのランチを断ったそうです。
「運動会自体は座って見ている時間も多いんです。それなのに、毎年なぜこんなに疲れるんだろうと思っていました」
そんな妻を見て、隆さんが言いました。
「運動会を見に来たのに、なんでお前がずっと働いてるんだ?」
「だって、美香も疲れてるでしょう」
「向こうも『何もしなくていい』って言ってるじゃないか」
恵子さんは「こういうときくらい、やってあげたいじゃない」と返しました。
孫や子どものために時間を使う高齢者は珍しくありません。内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』では、日常生活で家族や知人から頼られる内容として「子や孫の世話」を挙げた人は26.0%。「家事」は35.9%で、女性に限ると42.4%でした。
恵子さんの場合、娘から頼まれて家事をしていたわけではありません。
孫に会えるのがうれしい。娘も助けてあげたい。その気持ちから自分で始めたことが、いつの間にか運動会とセットになっていたのです。
