「私が出してあげる」孫の進学を機に解約した定期預金
「高校に入ったら、パソコンも必要になるんだって」
長女の由佳さん(仮名・43歳)からそう聞いたのは、母の恵子さん(仮名・70歳)が孫の高校合格を祝うため、娘一家と食事をしていたときでした。
恵子さんは5年前に夫を亡くし、現在は一人暮らし。年金は月約16万円で、住宅ローンを完済したマンションに住んでいます。預貯金は約1,800万円あり、そのうち500万円ほどを定期預金にしていました。
由佳さんには高校生になる長男と、中学生の長女がいます。
「入学金も制服もあるし、今年は本当にお金が飛んでいくよ」
由佳さんはそうこぼしましたが、恵子さんに援助を頼んだわけではありません。それでも恵子さんは、「パソコンくらい、私が出してあげるよ」と申し出ました。
結局、パソコンだけでなく、制服や通学用の自転車なども含めて約40万円を援助しました。孫から「おばあちゃん、ありがとう」と言われたことが、恵子さんは何よりうれしかったといいます。
その後も、夏期講習に約20万円、翌年には孫娘の塾代として30万円ほどを援助。由佳さんから「お願いできる?」と相談されることも増えていきました。
恵子さんはそのたびに定期預金の一部を解約しました。
「孫の将来のためなら、残しておくより今使ったほうがいいと思ったんです。私が元気なうちにしてあげられることでもありますから」
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上の25.8%が、今後優先的にお金を使いたいものとして「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」を挙げています。また、子や孫の生活費について「ほとんど負担している」は6.6%、「一部を負担している」は18.6%でした。子や孫への経済的な支援は、決して特殊なものではありません。
ただ、恵子さん自身の家計に大きな余裕があるわけではありませんでした。
年金16万円から管理費や修繕積立金、食費、光熱費などを払うと、毎月自由に使える金額は限られます。家電の買い替えや固定資産税などまとまった支出があれば、預貯金から補うこともありました。
それでも、孫のためのお金だけは「別」と考えていたのです。そんな関係が変わったのは、援助を始めて3年ほど経ったころでした。
由佳さんから電話があり、
「来年、上の子が大学受験でしょう。入学したら、一人暮らしになるかもしれないの」
と言われました。そして続けて、
「最初に100万円くらいお願いできないかな」
と切り出されたのです。
