(※写真はイメージです/PIXTA)

成人した子どもが離婚や失業などをきっかけに実家へ戻ることは珍しくありません。親にとっては「困っているなら助けたい」という気持ちがある一方、老後の生活に入った後では、家計や家事の負担も無視できません。一時的な同居のつもりが長引けば、親子双方が次の一歩を踏み出しにくくなることもあります。

「いつか出る」のまま半年…親子が決めた新しいルール

転機になったのは、昌美さんが実家へ戻って半年ほど経ったころでした。和子さんが友人との旅行を断ったことを、隆夫さんが知ったのです。

 

「どうして行かなかったんだ?」

 

「昌美もいるし、食事のこともあるから」

 

隆夫さんは呆れました。

 

「42歳だぞ。自分の食事くらい自分でできるだろう」

 

その言葉で、和子さんも自分が再び「娘の世話をする母親」に戻っていたことに気づきました。夫婦は昌美さんと話し合うことにしました。

 

「出ていけと言いたいわけじゃないの。でも、いつまでこのままなのか分からない状態は続けられない」

 

和子さんが伝えると、昌美さんは黙りました。隆夫さんは、まず半年後を一つの区切りにしようと提案しました。

 

それまでに正社員だけに絞らず、派遣や契約社員も含めて働き口を探す。収入ができたら月3万円を生活費として家に入れる。洗濯と平日の夕食は自分で行う。

 

さらに就職が決まり次第、実家から通いながら賃貸住宅を探すことにしました。

 

昌美さんは最初、「今こんな状態なのに、期限まで決めるの?」と反発しました。

 

しかし、自分でも「いつか出る」と言いながら、具体的な時期を考えなくなっていたことは認めたといいます。

 

厚生労働省の「求職者支援制度」では、再就職や転職を目指す人を対象に、一定の要件のもとで職業訓練や就職支援を受けられる仕組みがあります。雇用保険を受給できない人でも対象となる場合があり、ハローワークで相談できます。

 

昌美さんもハローワークを利用し、パソコンスキルを学び直したうえで、数ヵ月後に契約社員として働き始めました。

 

すぐに一人暮らしへ戻れたわけではありません。収入が安定するまで実家で暮らしながら資金を貯め、約1年後、職場に通いやすい場所で小さな賃貸マンションを借りました。

 

成人した子どもが生活に困ったとき、実家が一時的な受け皿になることはあります。

 

親子だからこそ受け入れられる期間がある一方、老後を迎えた親にも自分たちの生活があります。再同居を始める際には、「いつまで」「何を負担するか」を最初から話しておくことが、双方の生活を立て直すための一つの方法になります。

 

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