(※写真はイメージです/PIXTA)

「子どもや孫の喜ぶ顔が見たい」「元気なうちにできる限りのことをしてあげたい」——そんな温かい親心から、子や孫へ援助を惜しまないシニア世代は少なくありません。しかし、子や孫への援助にはある「大前提」が一つあって……。本記事では、田中夫妻(仮名)の事例を通して、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が、老後のマネープランで見落としがちなポイントを解説します。※本記事は実話をベースに構成していますが、プライバシー保護のため、個人名や団体名、具体的な状況の一部を変更しています。

あながち冗談ではなかった資産状況

実際、和子さんが口にした言葉はあながち冗談とも言い切れない状況でした。

 

リタイアした当初、正夫さん夫妻には約5,000万円の金融資産がありました。しかし、現在残っているまとまった資産は、夫婦それぞれが加入している終身保険(合計約1,000万円)と、預金口座の約100万円、そして毎年100万円ずつ受け取れる個人年金保険が残り3年分程度という資産状況です。

 

夫婦で月28万円ほどの年金収入があるため、「老後は余裕だろう」と考えていましたが、この10年間で資産は想像以上のスピードで減っていました。

 

和子さんが発した言葉は冗談半分だったものの、漠然とした不安から出た切実な声だったのです。そして、その一言がきっかけとなり、思わぬ形で家族との距離が生まれてしまいました。

お金を使い過ぎたこととは別の、本質的な問題点

正夫さん夫婦の問題は、表面的には子どもや孫にお金を使いすぎてしまったことが原因と考えられがちですが、本質は違うところにあります。

 

実は、夫婦の毎月の支出は平均すると約50万円にも達していました。年金収入が月28万円ですので、月約22万円もの赤字が発生していた計算になります。

 

正夫さんはリタイア後も、身体に無理のない範囲でアルバイトをし、個人年金保険も受け取っていましたが、それでも月のマイナスを埋めるには至っていませんでした。預金残高が減っていることは自覚していたものの、個人年金保険なども取り崩していたため、自分たちの総資産がいくらなのか、正確に把握できていなかったのです。

 

つまり、本当の問題は「自分たちが年間いくら使っていて、この生活を続けた場合に資産がいつまで持つのか」を知らないまま、お金を使い続けていた点です。

 

総務省統計局の「家計調査」は、全国約9,000世帯を対象として家計の収入・支出などを調査しています。二人以上世帯における2025年平均の世帯の消費支出は月31万4,001円となっています。なお、この数字は高齢夫婦だけに限定したものではありませんので、老後生活の目安とする場合には、世帯属性の違いに注意する必要があります。

 

また、2025年の「家計調査(貯蓄・負債編)」によれば、二人以上世帯の貯蓄現在高は平均2,059万円、貯蓄保有世帯の中央値は1,264万円です。平均値だけを見ると多く感じますが、中央値とは大きな開きがあります。

 

これらのデータと比較しても、月50万円という正夫さん夫婦の支出水準は明らかに高く、一般的な生活費とかけ離れていました。これでは資産の減り方が速くなるのも当然といえます。

 

「家族への愛情」と「出せるお金」はわけて考える

もちろん、一般的な家庭より支出が多いこと自体が悪いわけではありません。5,000万円の資産があり、夫婦で28万円の年金以外にも収入があるなかで、「子どもの住宅購入を支援したい」「孫にプレゼントを買ってあげたい」「家族が集まったら美味しいものを食べさせたい」など、「残りの人生は好きなことにお金を使おう」と決めるのも立派なライフプランです。自分が大切だと思う人のためにお金を使うことは大事なことです。

 

一方で、見落としてはならないのは、その生活を何歳まで続けられるのかを理解したうえで使えているかどうかという視点。自分たちの生活が成り立つことが前提にあるからこそ、子や孫に気持ちよくお金を出してあげることができます。

 

まずは年金やそのほかの収入を整理し、生活費、住居費、旅行、医療・介護費など、これから必要になる支出を見える化してみましょう。

 

そのうえで、「子どもにいくら援助できるのか」「孫に年間いくら使えるのか」まで予算として考える必要があります。たとえ2,000万円を援助しても、自分たちの老後資金が十分残るようであれば問題ないのです。一方で、500万円の援助でも自分たちの生活を圧迫するのであれば、慎重に考えなければなりません。

 

家族への愛情と、出せるお金の金額はわけて考えましょう。「自分たちはどうしたいのか?」という基準から、優先順位をつけてなににいくらお金を使うかを決めていき、場合によっては、リタイア後も働いて収入を得ることも選択肢の一つです。

 

現状に気がつくのが早ければ早いほど、理想の生活に向けた軌道修正は容易になります。人生をより豊かなものにするためにも、まずは収支のバランスを整えることから始めてみてはいかがでしょうか。

 

 

小川 洋平

FP相談ねっと

ファイナンシャルプランナー

 

【関連記事】

■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」

 

「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

 

 

 

【注目のセミナー情報】​​​

【事業投資】8月22日(土)オンライン開催
ドバイ発「ダイヤモンド事業投資」の最新事情
原石から製品まで一貫管理の独自スキームを公開

 

【海外不動産投資】8月30日(日)会場開催
大和ハウス工業が事業参画!
米国・ウエストニューヨーク「分譲マンション」の全貌

 

 

※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧