「老後の心配はないと思っていた」穏やかな日々の突然の悲劇
地方都市に暮らす山本正一さんは、2歳年上の妻の和子さん(仮名)と2人暮らしをしていました。
正一さんは、現役時代に大手企業の製造部門にて部長職を務め、65歳で退職。退職時、マンションの住宅ローンを退職金で完済しています。マンションは、築年数が経過しているものの、駅やスーパーにも近く、老後の生活に不便はありません。
年金収入は、正一さんが月18万円、和子さんが月10万円。夫婦合わせて月28万円ほどです。和子さんは結婚後、長くパートをしながら主婦として家庭を支えてきましたが、結婚前に会社員として働いていた期間があり、老齢基礎年金に加えて少額の老齢厚生年金も受け取っていました。
さらに金融資産として、預金600万円と、生命保険の解約返戻金相当額1,400万円の計約2,000万円を保有。自宅も売却すれば1,000万円程度の価値があります。
「住宅ローンもないし、年金だけで普段の生活はできる。老後は大丈夫だろう」と正一さんは思っていました。
子どもたちはすでに独立し、孫にも恵まれました。年に何度か夫婦で旅行に出掛け、孫の誕生日にはプレゼントを贈る――。決して派手な生活ではありませんでしたが、お金に困ることもなく、穏やかな老後を過ごしていたのです。
ところが、ある冬の日に和子さんが浴室で倒れているのを正一さんが発見。救急車を呼びましたが、和子さんが帰ってくることはありませんでした。
突然の出来事に、正一さんはしばらく現実を受け入れることができません。それまで当たり前のように隣にいた妻がもういない。一人になったマンションは、驚くほど静かです。
和子さんが亡くなってから、正一さんの生活は少しずつ変わっていきます。