「こんなの国の陰謀だ!」年金月24万円・貯蓄400万円の夫婦、72歳夫が年金事務所に怒鳴り込み。きっかけは〈9月に届いた年金機構からの通知〉…一転、役人の一言ですごすご帰宅したワケ【FPが解説】

小川洋平
「こんなの国の陰謀だ!」年金月24万円・貯蓄400万円の夫婦、72歳夫が年金事務所に怒鳴り込み。きっかけは〈9月に届いた年金機構からの通知〉…一転、役人の一言ですごすご帰宅したワケ【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

公的年金は、受給が始まればなにもしなくても同じ金額が振り込まれ続けるものではありません。手取り額に変化が起きたとき、その原因を突き止めるのは、公的年金には所得税や住民税、各種控除が細かく絡み合っているため、専門知識がなければ正しく理解するのは容易ではないでしょう。本記事では、佐藤正雄さん(仮名)の事例とともに、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」による老齢年金への影響について、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

「なぜこんなに税金が引かれるのか」72歳夫、AIに尋ねると…

地方で二人暮らしをしている佐藤正雄さん(72歳)と妻の恵子さん(仮名/69歳)。正雄さんは会社員として長年働き、現在は年金を受け取りながら、ときどき近所のコンビニや工場で単発のアルバイトをしています。

 

夫婦の年金は合わせて月約24万円で、内訳は正雄さんが月17万5,000円ほど、恵子さんが月6万5,000円ほどです。資産としては、二人が各自200万円ほどの生命保険に加入しているほか、現預金が約400万円。持ち家で住宅ローンも完済していますが、これから医療費や介護費、住宅の修繕などまとまった支出が発生する可能性を考えれば、決して余裕のある老後とはいえません。

 

そんなある日、年金の入金額や通知書を確認していた正雄さんは、ふと疑問を抱きました。

 

「なんだこれ……税金、こんなに引かれてたのか?」

 

以前より所得税の負担が増えているように見えます。気になった正雄さんは、最近使いはじめたAIに質問してみました。

 

「年金から税金がたくさん引かれているんだけど、どうして?」

 

AIとのやりとりを続けているうちに、前年の9月ごろ、日本年金機構から届いていた書類のことを思い出しました。

 

「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」

 

確かにそんな書類が届いていました。しかし、なにやら難しそうなことが細かい文字で書かれていて、正雄さんは、「また年金の案内か」と、よく確認しないまま引き出しにしまっていたのです。

 

慌てて書類を探し出し、再びAIに質問します。

 

「これを出さなかったから税金が増えたのか?」

 

すると、配偶者控除などが源泉徴収に反映されず、税金が多く引かれる場合があるという回答が出てきました。さらに、正雄さんは条件を入力しながら、「俺はいくら損したんだ?」と質問します。

 

画面には、年間で数万円程度の差が生じる可能性がある旨が表示されました。AIが示した数字は正雄さんの収入や控除をすべて正確に把握して計算した税額ではありません。しかし正雄さんには、そんなことは頭に入りませんでした。

 

「冗談じゃないぞ!」

 

突然大きな声を出した夫に、恵子さんが驚きます。

 

「どうしたの?」

 

「この紙を出さなかったから、税金を余計に取られてるらしいぞ!」

 

正雄さんは激怒しています。

 

「そんなに大事な書類なら、もっとわかりやすく書けよ。年寄りにこんなのわかるわけないだろ!」

 

そして翌日、問題の申告書を手に、正雄さんは年金事務所へ向かいました。

次ページ夫が年金事務所へ怒鳴り込むと…

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