(※写真はイメージです/PIXTA)

「子どもや孫の喜ぶ顔が見たい」「元気なうちにできる限りのことをしてあげたい」——そんな温かい親心から、子や孫へ援助を惜しまないシニア世代は少なくありません。しかし、子や孫への援助にはある「大前提」が一つあって……。本記事では、田中夫妻(仮名)の事例を通して、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が、老後のマネープランで見落としがちなポイントを解説します。※本記事は実話をベースに構成していますが、プライバシー保護のため、個人名や団体名、具体的な状況の一部を変更しています。

「親が元気なうちは、子や孫にできる限りのことを」

地方都市で暮らす田中正夫さん(仮名/75歳)は、妻の和子さん(仮名/72歳)と2人で年金生活を送っています。

 

2人の子どもはすでに独立してそれぞれに家庭を築きました。孫は、下は3歳から上は小学校高学年まで、全部で5人います。

 

毎年お盆ともなれば、子どもと孫が実家に勢ぞろい。正夫さんと和子さんは、オードブルやお寿司を用意して温かく迎えます。みんなで外食に行った際には、当然のように正夫さんが会計を済ませていました。お正月には孫たちへのお年玉。誕生日にはプレゼントにケーキにと、孫たちのために惜しみなくお金を使ってきました。

 

正夫さんには、「親が元気なうちは、子どもにできることをしてやりたい」という考えがあったのです。10年ほど前、子どもたちがそれぞれ住宅を購入する際にも、1,000万円ずつ、合計2,000万円を援助しています。その後もたくさんの孫に恵まれ、子どもたちとも良好な関係を築いてきたつもりでした。

 

ところが最近、正夫さん夫婦はある変化に気づきます。楽しみにしていた孫の誕生日会に、いつの間にか呼ばれなくなっていたのです。

冗談のつもりだった一言

変化のきっかけは、その年のお正月でした。

 

いつものように子どもたちと孫たちが集まり、賑やかな時間を過ごしていたときのこと。何気ない会話のなかで、和子さんがふと漏らしました。

 

「最近、預金の残高がずいぶん減ってきちゃって。ちょっと不安なのよね」

 

そして、半分冗談のつもりでこう続けました。

 

「あなたたちにもいっぱいお金を渡したから、もうお金は残っていません(笑)」

 

正夫さん夫婦としては、子どもたちを責める意図などありませんでした。ところが、子どもたちの受け止め方は違ったようです。

 

これまで、誕生日会に呼べばケーキを用意してくれる。孫には必ずプレゼントを買ってくれる。外食すればお金を払ってくれる。――それだけに、子どもたちは「親に無理をさせていたんじゃないか」と負い目を感じるようになったのです。

 

それ以降、子どもたちは両親に気を遣うようになり、誕生日会などにも積極的に誘わなくなっていきました。

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