(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが独立した後、大きな戸建てを持て余すようになり、マンションへの住み替えを考える夫婦もいます。庭や建物の管理から解放され、生活動線もコンパクトになる一方、長年暮らした家を手放して初めて気づくこともあります。老後の住み替えは、単純に「小さな家に移れば楽になる」とはいかないようです。

「楽になった」のに…前の家を思い出すようになった理由

恵子さんが最初に気になったのは、収納でした。戸建てでは季節家電や来客用の布団を別室に置いていましたが、2LDKではそうはいきません。

 

「捨てたときは要らないと思ったのに、後から『あれは残しておけばよかった』と思うものもありました」

 

正志さんが気になったのは、毎月の固定費です。

 

管理費と修繕積立金、駐車場代を合わせると月約4万5,000円。戸建てでも修繕費はかかっていましたが、毎月決まった額が口座から引き落とされるわけではありませんでした。

 

さらに、マンションの修繕積立金は将来変わる可能性もあります。年金25万円から毎月支払っていくことを考えると、正志さんは購入時より気にするようになりました。

 

一方、恵子さんが意外に寂しく感じたのは、庭がなくなったことでした。以前は面倒だと言っていたものの、春には花を植え、夏には朝早く水やりをしていました。

 

「草取りは嫌だったんですよ。でも、庭そのものが嫌だったわけじゃなかったんですね」

 

近所との付き合いも変わりました。

 

以前は家の前で近所の人と立ち話をしたり、野菜をもらったりすることがありました。新しいマンションでは顔を合わせれば挨拶はしますが、それ以上の付き合いはまだありません。

 

夫婦は「戸建てを売らなければよかった」と考えているわけではありません。

 

総務省『令和5年住宅・土地統計調査 住宅の構造等に関する集計』によると、65歳以上の人がいる世帯のうち、一定のバリアフリー化がなされた住宅に住む世帯は45.4%でした。高齢になっても暮らしやすい住宅を確保することは、住まいを考えるうえで重要な要素です。

 

実際、恵子さんは階段がなくなったことを「一番よかったこと」と話します。正志さんも、台風のたびに屋根や庭を心配する必要がなくなりました。

 

「前の家に戻りたいわけじゃないんです。ただ、身軽になれば全部楽になると思っていました」

 

最近、恵子さんはベランダに小さな鉢植えを置き始めました。正志さんは車を手放すことも検討し、固定費を少し減らそうとしています。

 

戸建てからマンションへの住み替えで、家の管理や階段といった負担を減らすことはできます。一方で、広さや庭、地域との付き合いなど、住み替えによって失うものもあります。

 

夫婦にとって現在のマンションは、以前の家より「楽に暮らせる家」ではあります。ただ、住み替えて1年が経った今は、身軽さだけでは測れない住まいの価値も感じるようになっています。

 

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