経常収支は黒字だが、投資収益を除けばトントンに
輸出企業が海外現地生産を進めていることなどから、日本の貿易収支は概ねゼロ(原油価格等で変動する)となっています。これが、ドル安とならない主因です。
円高論者のなかには「経常収支は大幅黒字だから、円高になるだろう」と考えている人もいるようですが、筆者はそうは思いません。経常収支が黒字なのは、所得収支(利子や配当の海外との受払)が黒字だからなのです。そして、貿易収支等はドルの値段に直結しますが、所得収支はそうではないからです。
輸出企業は海外から受け取ったドルを円に換えます。社員の給料等を円で支払う必要があるからです。しかし、投資家たちは、海外から受け取った利子や配当を円に換える必要が乏しいので、「その分は、新たな海外投資に使おう」と考える場合も多いからです。
初心者向け:実質実効為替レートは「輸出困難度指数」
為替レートが割高か否かを判断する材料として、実質実効為替レートというものが使われることがあります。これは、「輸出困難度指数」という名前にすべきだと筆者が考えているものです。
過去の1時点をスタート地点に選び、スタート地点を100とします。そして、「ドルが高くなったら輸出が容易になるので点数を下げ、ドルが安くなったら輸出が困難になるので点数を上げる」「米国の物価が上がったら輸出が容易になるので点数を下げ、日本がインフレになったら輸出が難しくなるので点数を上げる」という作業を繰り返すのです。米国以外の貿易相手国に関しても同様の作業をして、結果を「加重平均(大事な国の数値が大きく反映されるような計算方法で平均を求めること)」することで指数が求められます。そうして求めた値は、過去の数値より小さく、今の日本の輸出が為替レートから見ると大幅に円安だ、ということを物語っているのです。
ちなみに、ドルの値段は数字が大きくなると輸出が容易になりますが、実質実効為替レートは数字が大きくなると輸出が困難になるので、注意が必要です。筆者が為替レートという言葉を嫌って輸出困難度指数と呼んでいるのは、そうした理由からなのです。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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