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経済は「優しい心」だけで語ってはダメ
「弱者保護が弱者を苦しめるかもしれない」などと記すと、読者は筆者を冷たい人間だと思うかもしれません。しかし、筆者は被災地に寄付をしたりしますし、自分では心温かい人間だと思っています。
たとえば、優しい心だけでは子育てはできません。なんでも子どもの言うことを聞いているとワガママな子に育ってしまうので、ときには心を鬼にして我慢させることも大事です。同様に、経済を語るためには優しい心だけではダメで、冷たい頭脳も必要なのです。そこで本稿は、あえて温かい心を封印して冷たい頭脳で論じてみよう、というわけです。
よかれと思った弱者保護の結果「むしろ弱者が苦しくなる」ワケ
安い賃金で働かされている労働者が可哀想だから、最低賃金を引き上げよう、というのは温かい心から出てくる政策でしょう。しかし、最低賃金を引き上げたことで「それなら雇わない」という会社が増えて、失業者が大幅に増えてしまうかもしれません。そうなれば、心優しい政策によって労働者が苦しむことになってしまいます。
心優しい王様が「イモの値段を下げろ」という法律を作ったら、農家のなかには「市場まで売りにいくのは面倒だから豚の餌にしよう」というところが出てくるかもしれません。そうなると、人間が食べられるイモの量が減ってしまいます。しかも「とても空腹だから、高い値段でも食べたい」と思っている人がイモにありつけるとは限らなくなります。運のいい人がイモにありつけるわけです。それでは、空腹な人が苦しむことになってしまいます。
貧しい人々のために「狭い家は家賃を安くしろ」という法律を作ったとします。大家たちは「それなら金持ち向けの広い家を建てよう」と思うかもしれません。そうなれば貧しい人が借りられる家が減り、住むところを失う人が出てくるかもしれません。
女性の重労働や深夜労働を禁止すると、それなら男性を雇うという企業が増えて、女性が失業してしまうかもしれません。あるいは「思い切り働いて稼ぎたい」「同期の男性より出世するためなら深夜残業も厭わない」といった女性が困ることにもなりかねません。
