家を欲しがっていた妻、苦渋の決断
「家、売りましょう」
そう切り出したのは、奈緒さんのほうでした。
「本気か?」
「うん。このままローンのために生活するのは違うと思う。家は欲しかった。でも、こんな風になるぐらいなら買うんじゃなかった……今はそう思ってる。子どものためにもならないよ」
せっかく購入したマイホーム。子どもたちとの思い出もあり、この先も家族で一緒に暮らしていく未来を思い描いていました。奈緒さんも、家を欲しがっていたからこそ、売却に迷いがなかったわけではありません。
「ここを手放したら、もう家を買えないかもしれないぞ」
「うん……それでもいい。家を持つことより、家族が笑顔で暮らせることのほうが大事だと思うの」
最終的には、子どもたちのことを考え、売却を決断。幸い購入後に周辺の不動産価格が上昇していたため、購入時より高い価格で売却。ローンを返済したあとも数百万円が手元に残りました。
「もうローンに追われる生活はしたくない」
一家は以前より少し駅から離れた賃貸住宅へ引っ越しました。以前のマンションほど設備が充実しているわけではなく、見劣りするのは事実です。それでも、敦さんは売却を後悔していません。
「賃貸だから、収入が減ったら家賃の安いところに移れる。家族の状況が変わったら、また引っ越せばいい。そう考えられるだけで、ずいぶん違いますよ」
奈緒さんも、「あのまま無理していたら、家族のほうが壊れていたかもしれない。今の方がずっと身軽です」と振り返ります。
