子どもの独立後に始めたスーパー勤務…気づけば14年に
「夫には、ときどき『もう働かなくてもいいんじゃない?』と言われます」
そう話すのは、68歳の久美子さん(仮名)です。70歳の夫・和弘さん(仮名)と2人で暮らしています。
夫婦の年金収入は合わせて月約27万円。貯蓄は約3,000万円あり、住宅ローンもすでに完済しています。
久美子さんが働いているのは、自宅から自転車で10分ほどのスーパーです。週3日、午前9時から午後1時まで。品出しや売り場の整理を担当し、月の給与は5万円前後になります。
働き始めたのは54歳のときでした。
結婚後は子育てをしながら専業主婦として過ごし、子どもが成長してからも家事を中心に生活していました。しかし、下の子が就職して家を出ると、一日の時間が急に余るようになったといいます。
「朝、夫を送り出して家事をしたら、午前中にはやることが終わってしまうんです。最初は楽でいいと思っていたんですけど、それが毎日となると長く感じるようになって」
そんなとき、近所のスーパーでパート募集の張り紙を見つけました。
久しぶりの仕事には不安もありましたが、勤務は1日4時間。まずはやってみようと応募したそうです。
当初はレジを担当し、その後、品出しや売り場整理が中心になりました。気づけば14年になります。
一方、夫は65歳で会社員生活を終えました。
それまで久美子さんの仕事について何か言うことはありませんでしたが、自分も仕事を辞めると、「そろそろ二人でゆっくりしてもいいんじゃないか」と話すようになったそうです。
「夫からしたら、朝早く起きて仕事に行く必要なんてないだろう、ということなんです。旅行に行くにも私のシフトを確認しないといけない。それが不思議みたいで」
久美子さん自身も、一度は辞めることを考えました。
年金月27万円に加えて3,000万円の貯蓄があります。もちろん将来の医療費や住まいの修繕費なども考える必要がありますが、パート代がなくなっただけで直ちに生活が成り立たなくなる状況ではありません。
それでも、店長に退職を申し出るところまではいきませんでした。
「仕事の日は朝7時に起きて、8時半には家を出る。帰ってきたら昼ご飯を食べる。何でもないことなんですけど、その予定があるのが私にはちょうどいいんですよね」
総務省『労働力調査(基本集計)2025年平均結果』によると、65歳以上の女性の就業率は19.6%。10年前の2015年は15.0%で、高齢期にも働く女性は増えています。
久美子さんにとって仕事は、いつの間にか「家計のため」だけでは説明できないものになっていました。
