娘の育休をきっかけに始めた月3万円の援助
「最初から10年も続けるつもりではなかったんです」
そう話すのは、74歳の恵子さん(仮名)です。
夫とは6年前に死別し、現在は一人暮らし。年金は月約17万円で、住宅ローンを完済した戸建てに住んでいます。夫から引き継いだ分を含め、現在の預貯金は約1,600万円です。
恵子さんには、46歳の長男と43歳の長女がいます。長女の真由さん(仮名)は結婚しており、中学生と小学生の子どもがいます。
恵子さんが娘へお金を渡し始めたのは、10年ほど前でした。
当時、真由さんは2人目の子どもを出産したばかり。育児休業を取得したことで収入が減り、住宅ローンや上の子の保育料などもあり、「今月も結構厳しい」と恵子さんにこぼしたことがあったそうです。
そこで恵子さんは夫と相談し、毎月3万円を渡すことにしました。
「娘から『毎月ちょうだい』と言われたわけではないんです。私たちのほうから、仕事に戻って落ち着くまで少し出そうか、と言いました」
真由さんは当初、「そこまでしてもらわなくていい」と断ったものの、最終的には受け取ることに。
数ヵ月のつもりだった援助は、娘が仕事に復帰した後も続きました。
孫が大きくなるにつれ、習い事や学用品などにもお金がかかります。恵子さん自身も「3万円ならそれほど大きな負担ではない」と考え、やめようとは思いませんでした。
やがて、毎月決まった日に3万円を振り込むことが当たり前になります。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、子や孫の生活費を「ほとんど負担している」と回答した人は6.6%、「一部を負担している」は18.6%で、合わせて25.2%でした。また、今後優先的にお金を使いたいものとして「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」を挙げた人も25.8%います。
恵子さんの場合、夫が働いていたころは、毎月3万円を渡しても家計に大きな影響はありませんでした。
しかし、その後、夫が退職。さらに6年前に亡くなり、恵子さんの生活は年金中心に変わりました。
それでも娘への送金だけは、そのまま残りました。
「娘に送る3万円は、生活費と同じような感覚になっていました。毎月払うもの、みたいになっていたんですよね」
変化があったのは、昨年のことです。給湯器の交換やエアコンの買い替えが重なり、まとまった出費が発生しました。
通帳を確認した恵子さんは、ここ数年、年金だけでは足りない月に預貯金を取り崩していることに改めて気づきます。
そして、毎月3万円を娘へ送りながら、自分は貯蓄から生活費を補っていることに、初めて違和感を覚えました。
