「これくらいなら払える」退職後に始めた月2万円の社交ダンス
「若いころから、一度やってみたかったんです」
そう話すのは、70歳の和子さん(仮名)です。
夫とは死別し、現在は一人暮らし。長年勤めた会社を68歳で退職し、現在は月約19万円の年金を受け取っています。住宅ローンを完済したマンションに住み、退職時に約1,800万円あった預貯金は、現在約1,600万円です。
仕事を辞めた直後は、平日に自由に過ごせることが新鮮でした。ところが数ヵ月すると、「毎日が日曜日みたいで、少し張り合いがない」と感じるようになったそうです。
そこで思い出したのが、以前から興味のあった社交ダンスでした。
近所で教室を探したところ、週1回のグループレッスンで月謝は約2万円。体験レッスンに参加すると、同年代の生徒も多く、すぐに入会を決めました。
「年金が19万円ありますし、住宅ローンもありません。月2万円なら趣味に使っても大丈夫だと思ったんです」
レッスンがあるのは毎週木曜日。
午前中に家事を済ませ、昼食後に着替えて教室へ向かいます。ステップを覚えるのは思った以上に難しかったものの、それも楽しかったといいます。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』では、継続的に行っている社会的活動として「趣味やおけいこ事」を挙げた人は19.7%でした。また、この1年間に始めた学習活動では、「芸術・文化」が11.5%となっています。高齢期に趣味や学びの活動を続ける人は一定数います。
和子さんも、最初の半年ほどは「もっと早く始めればよかった」と思うほど夢中になりました。
ただ、続けるうちに当初は考えていなかった支出が増えていきます。まず購入したのが練習用のシューズとウェアでした。
さらに、通常のグループレッスンだけでは分からないところがあり、ときどき個人レッスンも受けるようになります。そして入会から半年ほど経ったころ、教室から発表会への参加を勧められました。
「最初は出るつもりはなかったんです。でも、周りの方から『せっかくだから一度出てみたら』と言われて。私もだんだん出てみたくなったんですよね」
参加費のほか、衣装なども必要です。
一つひとつは納得して支払っていましたが、年末にその年の支出を確認したとき、和子さんは驚きました。
月謝だけなら年間24万円です。ところがシューズやウェア、追加レッスン、発表会関連の費用まで含めると、ダンスに使ったお金は年間で50万円を超えていました。
「誰かに無理やり払わされたわけではありません。全部、自分でやりたいと思って出したお金です。ただ、最初に考えていた金額とは全然違っていました」
