ご褒美旅行から帰国すると、玄関に見慣れない靴、明るい室内
五十嵐哲也さん(65歳、仮名)は大手機械メーカーを定年退職。退職金は1,800万円。これまで蓄えてきた預貯金と合わせて資産は約4,000万円に達し、住宅ローンも無事に完済。妻の瑞枝さん(65歳、仮名)と合わせた年金額は月22万円と、身の丈に合った老後を送るには十分な資金状況でした。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、60代・二人以上世帯の金融資産保有額の中央値は約1,400万円(金融資産無しの人も含む)。資産3,000万円以上の世帯は全体の約27%にとどまります。五十嵐さん夫妻の「資産4,000万円・ローン完済」は、老後資金として優秀な水準といえます。
退職を記念し、二人は以前からの夢だった「ヨーロッパ周遊2週間の旅」へ出かけました。近年の円安もあり、各種オプショナルツアーや航空券を含めて費用は200万円超という大奮発。
「現役時代頑張ったご褒美だし、今回は特別。これからはしっかり生活レベルをダウンサイズしていかなきゃ」
帰国のタクシーの中、充実感に満ちた表情でそう語り合っていた二人。旅行中は、鉢植えの水やりや防犯を兼ね、「ときどき様子を見てほしい」と、隣町に嫁いだ一人娘の歩美さん(36歳、仮名)に予備の鍵を渡していました。
2人が自宅に到着したのは、22時過ぎ。ドアを開けると、すぐに異変に気づきました。玄関に見慣れない靴、室内に電気が灯っています。
「なんだ……?」
部屋に入ると──そこには暗い表情で座り込む歩美さんと、幼い孫の姿がありました。
ドアの向こうで待っていた「絶望の告白」
「おかえり……驚かせてごめんなさい。私、夫に追い出されちゃったの」
思わぬ言葉に、言葉を失う五十嵐さん夫婦。事情を聞くと、事態は深刻でした。
歩美さんは、ここ数年で多額のカードローンやリボ払いを重ねていました。SNSで見かけるキラキラした生活への憧れや子育てのストレスから浪費を重ね、気づけば借金総額は800万円に達していたというのです。
その事実が発覚した際、激怒した夫から「そんな人間とは一緒に暮らせない」と三行半を突きつけられました。3歳の子どもだけは手放せないと連れて家を出たものの、行くあてはありません。
結局、預かっていた鍵を使い、実家へ逃げ込んできたのでした。
「娘は涙ながらに反省していますし、助けてあげたい。でも、孫を含めた4人での同居生活なんて……それ以前に、借金はどうすればいい? 我々の老後は?」
ヨーロッパ旅行の余韻は一瞬で吹き飛び、五十嵐さん夫婦は暗澹たる未来に頭を抱えることになりました。
