築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
事例に学ぶ「サクラ入居」の巧妙な手口
都内近郊で中古アパートの購入を検討していたAさんは、「満室稼働・高利回り」を謳う物件を紹介されました。レントロール(不動産の賃貸借条件を一覧表にしたもの)上は全室が入居中で、賃料も相場水準。仲介業者からも「優良物件」と強く勧められ、購入を決断します。
しかし、引渡しから数ヵ月で状況は一変します。入居者の退去が相次ぎ、半数以上が空室に。調査してみると、短期入居ばかりで、連絡先や勤務先も曖昧な入居者が多く、不自然な実態が明らかになりました。
いわゆる「サクラ入居」です。実際には空室が多い物件に売主の関係者等を一時的に入居させ、満室を装って販売する典型的な手口です。購入後に一斉退去が起き、収益構造は一気に崩れます。
もっとも、このようなケースでも直ちに詐欺といえるわけではありません。売主の欺罔行為や故意の立証は容易ではなく、「購入後に退去が続いた」だけでは法的責任を追及できない場合も多いのが実務の現実です。
だからこそ、表面的な利回りや入居状況に依拠せず、「実態」を契約前に見極める視点が重要となります。
「レントロール偽装」を見抜くためのチェックポイント
サクラ入居のようなスキームは、「満室」「高利回り」という魅力的な数字で判断してしまう投資家心理を突いてきます。しかし、実務上はレントロールの“数字”だけをみても、実態は判断できません。
重要なのは、その裏付けとなる資料や運用実態まで踏み込んで確認することです。まず確認すべきは、各入居者の賃貸借契約書です。契約開始時期が短期間に集中していないか、契約条件が不自然に統一されていないかなどは重要なポイント。また、敷金・礼金の授受状況や、実際に資金のやりとりが行われているかも確認すべきでしょう。サクラ入居の場合、形式上の契約はあっても、実際の金銭授受が伴っていないケースもあります。
さらに、入居者の属性にも注意してください。勤務先や連絡先が曖昧であったり、似通った情報が並んでいたりする場合は要警戒です。また、賃料の入金履歴とレントロールの内容が一致しているかを確認することも極めて重要です。帳簿上の数字だけでなく、実際の入金実績をみなければ、収益の実在性は判断できません。
加えて、入居時期の偏りも典型的なチェックポイントです。引渡し直前に入居が集中している場合や、フリーレントなどの条件が付されている場合は、短期退去を前提とした“みせかけの入居”である可能性も考えられます。
このように、レントロールは単なる一覧表ではなく、「その物件の収益構造を裏付ける資料」です。数字の良し悪しだけで判断するのではなく、その裏にある契約・資金・運用の実態まで丁寧に確認することが、詐欺的スキームを見抜くための重要な視点といえるでしょう。

