築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
インフレは不動産鑑定基準で「家賃引き上げの要因」になる
最近話題になることが多い家賃の引き上げですが、そもそも、法的な根拠が定められているため、それを踏まえた「適切な内容およびタイミング」で行使していく必要があります。
まず、借地借家法32条によれば、以下の要件に該当する場合には、契約の上限にかかわらず、借賃の増減額を請求することができるとされています。
①土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、②土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、③又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき
したがって、賃料増額請求が行使できる時期は、契約の更新時に限られないため、増額できる要件を充たしていれば、適宜のタイミングで賃料増額請求を行うことができます。ただし、賃貸借契約書で増額できる時期、内容が定められていることが多いため、法律の定めだけでなく、契約書の規定の内容を確認しておくことも必要です。
増額できる要件については、実務上、不動産鑑定評価基準に基づき算定される継続賃料の考え方が重視されています。当該基準によれば、①差額配分法、②利回り法、③スライド法、④賃貸事例比較法の4手法からのアプローチで調整が行われ、鑑定評価額を決定すること等が定められています。
上記の不動産鑑定評価基準において、物価の変動などが一つの大きな要素とされておりますので、物価等が上昇している時期においては、一定の賃料増額が認められる可能性が十分にあるのです。
なお、増額される金額については一定の限界があります。たとえば、借地借家法32条に、「近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき」という記載はあるものの、近隣の新規賃料と同額の賃料まで一挙に引き上げることは、法的には難しいと考えられるでしょう。
弁護士が推奨するマイルドな交渉術
賃料増額請求をした場合に、入居者との交渉が調わないときには、原則として調停の申立てを行い(調停前置主義)、調停でも調わないときには裁判をすることになります。
しかし調停や裁判は、弁護士費用や鑑定費用等の費用が発生する可能性があり、事例によっては2年から3年以上の長期戦となる場合もあり、できる限り入居者とマイルドに交渉して、調停や裁判に至る前に合意するほうが望ましい事例も多いでしょう。
当然のことですが、賃料増額を交渉で合意しやすくするためには、入居者の納得を得ることが極めて重要なポイントとなります。具体的には以下の方法があげられます。
1.賃料を増額する根拠を明確に示す
不動産鑑定士が作成した書面は証拠として効果的です。
2.普段から入居者との信頼関係を築いておく
物件の維持管理を適切に行ったり、入居者とのコミュニケーションを十分に取ったりする良心的な管理会社を選定するなどの方法も考えられます。
3.入居者が納得しやすいタイミング、金額を十分に考慮して交渉に臨みます。

