「入学を諦めさせたくない」母が崩した定期預金
「美咲の入学金支払い、少し助けてもらえないかな」
長男の健太さん(仮名・42歳)から電話を受けたとき、和子さん(仮名・67歳)はすぐに断れませんでした。
健太さんの長女・美咲さん(仮名)は、希望していた私立大学に合格したばかりです。しかし健太さんの勤務先では前年から残業が減り、妻も体調を崩して仕事を休んでいました。
入学金と前期授業料などの納付期限は、約2週間後。奨学金は入学後に振り込まれるため、当面の資金が必要だといいます。
「教育ローンも申し込んでいるけど、間に合わないかもしれない。美咲には言えなくて」
和子さんは夫を6年前に亡くし、現在は一人暮らし。年金は月約13万円、預貯金は約780万円あります。住宅ローンはありませんが、固定資産税や自宅の修繕費を考えると、決して余裕はありません。
それでも、孫が進学を諦める姿は見たくありませんでした。
「110万円なら出せるよ。落ち着いたら少しずつ返してくれればいいから」
健太さんは「必ず返す。本当に助かる」と答えました。
和子さんは定期預金を解約し、翌日、健太さんの口座へ110万円を送金。孫からは「大学へ行けることになったよ。ありがとう」と電話がありました。
文部科学省『私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査』によると、私立大学の初年度学生納付金等の平均は150万7,647円です。入学料や授業料、施設設備費などが重なる入学年は、家計への負担が大きくなります。
和子さんは、孫の役に立てたことをうれしく思っていました。一方、健太さんから返済について連絡はなく、半年が過ぎても振り込みはありませんでした。
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