レバレッジを効かせた投資の広がりとリスク
筆者が銀行員として勤務していた頃にはレバレッジを効かせた不動産投資をおこなうために、多くの投資家が参入してきていました。
金融機関側でも不動産担保評価が確保されており、返済に問題がない借入人であれば積極的に融資をおこなうとのスタンスで取り組んでいたためアパートローンの融資残高が拡大していた時代でした。
なかには、金融機関の積極的な融資スタンスを悪用して不動産会社が審査資料を偽造して審査を通したり、売買契約書を複数作成してローンを多く調達するなどの犯罪行為も発生していました。
不動産投資家においても、実態の伴わないサブリース契約を締結して投資成果を誤信させ投資家に大きな損害を与えた結果、社会的問題となるような事件も起きました。
不動産投資においては不動産自体の知識はもちろんのこと関連する様々な知識が不可欠であるため安易に参入することで大きな痛手を被ることにもつながりかねません。
なぜ不動産は相続対策になるのか
次に、相続対策としての不動産投資について見ていきましょう。
「相続対策のために不動産を購入した」「相続対策のために不動産を購入しませんか」などの言葉を見聞きしたことはないでしょうか。
なぜ、不動産が相続対策に使われるのかを簡単に説明します。たとえば、預貯金を3億円持っているケースを前提とします。
Aさんは配偶者と子ども2人が法定相続人であるとすると相続税は概ね5,000万円程度かかります(配偶者控除は考慮外)。
相続税は純資産から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人)を引いて税率を計算したうえで相続税が課税されます※4。
※4 日本における相続税は「超過累進課税方式」であり、相続する資産が大きいほど税率が高くなり10%から55%の8段階の税率があります。また、法定相続人の数によっても異なります。
例えば、子ども1人が基礎控除額を引いた10億円を相続すると10億円に対して最高税率55%を乗じ控除額7200万円を引いた4億7,500万円が相続税となります。
一方で、子ども4人で相続をおこなうとすると、同様に基礎控除額を引いた課税資産が10億円であれば、1人当たり10億円 ÷ 4 = 2.5億円となるため、2.5億円 × 45% - 2,700万円 = 8,550万円となり、合計で8,550万円 × 4人 = 3億4,200万円となります。
相続人の数が多くなることで税率が下がり相続税も低くなります。
相続対策のために、自己資金1.5億円とローン1.5億円で3億円の不動産を購入したとします。
Aさんのバランスシートは資産が4.5億円になりますが、純資産は当初の3億円と変わりありません。したがって、相続税額も変わらないように思われます。
しかし、相続時における不動産の評価について、土地は相続税路線価を基準として計算をおこない、建物については固定資産税評価額を基準とした計算をおこなう仕組みとなっています。
◆不動産評価の仕組み(路線価・固定資産税評価額)
例えば、不動産の内訳が土地1.5億円、建物1.5億円であったとします。
細分化して示すと下図表6の通りです。
ここで、相続における不動産の評価をおこなうと例えば以下の図表7のようになります。
賃貸マンションなどの投資用不動産の場合、土地については借地権割合×借家権割合30%(例.借地権割合:70% × 30% = 21%)が減額され、更に小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)が使える場合には50%減額となります。
例えば、路線価を基にした土地評価が1億円であるとすれば、1億円 × 79% × 50% =3,950万円となります。
建物についても、建物すべてを賃貸としていれば固定資産税評価額×70%(借家権30%の減額)となります。
固定資産税評価額は築年が浅ければ時価と乖離があることが一般的であり(一方で築年が古くなってもゼロになることはありません)、おおむね時価の50%程度となっていることもあります。
したがって、固定資産税評価額が7,500万円であるとすれば、7,500万円 × 0.7 = 5,250万円になります。
購入価格と相続評価に乖離があるために相続対策になるという理屈です。
したがって、先ほどのAさんのバランスシートを改めて作成すると以下の図表8の通りとなります。
Aさんのケースでは3億円で購入した不動産の相続評価が1億円であると仮定したため、純資産が3億円から1億円(土地5,000万円+建物5,000万円)に圧縮されたことになります。






