「孫を預かるかも」で保留…夫婦のカレンダーに起きていた変化
「来週の木曜日、またお願いしてもいい?」
娘から電話がかかってくると、由美子さん(仮名・72歳)はいつものようにカレンダーを確認しました。
「木曜日なら空いてるよ」
由美子さんは夫の正志さん(仮名・72歳)と2人暮らし。夫婦合わせた年金は月約30万円、貯蓄は約4,600万円です。
娘は車で30分ほどの場所に住み、夫と小学3年生、5歳の子どもを育てています。
孫が生まれたころから、夫婦は娘夫婦をよく手伝ってきました。
保育園への迎えを頼まれれば由美子さんが車を出し、娘夫婦の帰宅が遅い日は夕食まで食べさせる。上の孫が小学生になると、長期休暇に預かることも増えました。
「孫に会えるのはうれしかったですし、娘も仕事をしていましたから。私たちは退職して時間があるし、できることはしてあげようと思っていました」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』では、日常生活で家族や知人から頼られる内容として「子や孫の世話」を挙げた人は26.0%でした。祖父母が子育てを支えること自体は、決して珍しいことではありません。
ただ、由美子さん夫婦の場合、いつの間にか順番が逆になっていました。
友人からランチに誘われても、まず孫の予定を確認する。夫婦で日帰り旅行を考えても、「急に頼まれるかもしれないから」と平日に予定を入れるのをためらうようになったのです。
ある春、正志さんが「桜を見に行こう」と1泊旅行を提案しました。
平日なら宿泊料金も比較的抑えられます。由美子さんも行きたいと思い、宿まで調べました。
ところが予約する直前、こんな言葉が出ます。
「その週、春休みでしょう。何か頼まれるかもしれないよ」
結局、予約はしませんでした。
実際には、その週に娘から頼まれたのは半日だけ。それでも旅行の話はそのまま消えてしまいました。
その後も似たことが続きます。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』では、今後優先的にお金を使いたいものとして「子や孫のための支出」を挙げた人が25.8%いる一方、「趣味やレジャー(旅行等)の費用」は32.4%でした。子や孫のためにお金や時間を使うことと、自分自身の生活を楽しむことは、どちらか一方を選ばなければならないものではありません。
