1,200万円をかけても、この家に住み続けたかった理由
夫婦は子どもたちとも何度か話し合った末、住み替えではなくリフォームを選びました。ただし、家全体を新築同様にすることはやめました。
今後はできるだけ1階だけで生活できるよう、寝室を1階へ移し、浴室、トイレ、台所を中心に改修。断熱性能を高め、廊下との段差をなくし、必要な場所には手すりを付けました。
2階は子どもたちが帰省したときなどに使う程度と割り切りました。
「79歳で1,200万円をかけるのは、正直迷いました。この先、何年住むのか分かりませんから」
隆さんはそう振り返ります。それでも、マンションへ住み替える場合には物件の購入費だけでなく、管理費や修繕積立金も必要です。引っ越しや家財処分にも費用がかかります。
何より、「今の地域で暮らし続けたい」という二人の希望が一致していました。
国の住宅政策でも、高齢者が住み慣れた住宅で暮らし続けられるよう、既存住宅の長寿命化やバリアフリー化を進めています。内閣府『令和8年版高齢社会白書』では、居住者の高齢化を想定した既存住宅の長寿命化に資するリフォームへの支援や、高齢者に適した住宅への住み替え支援の双方が掲げられています。つまり、高齢期の住まいには「改修して住み続ける」「住み替える」のどちらの選択肢もあります。
工事から1年。隆さん夫婦は以前と同じ家で暮らしています。
「朝起きて寒い廊下を歩くこともなくなりました。お風呂の段差もない。子どもたちにはまだ『高かったね』と言われますけど」
一方で、屋根や外壁など、今後も修繕が必要になる可能性はあります。夫婦はリフォームで貯蓄を使い切らず、将来の修繕費や介護費用に備える資金を別に残しました。
築年数の古い家に高額なリフォームをすることが、すべての人に適しているわけではありません。建物の状態や立地、今後の維持費によっては、住み替えたほうが負担を抑えられる場合もあります。高齢期の住まいを考える際は、改修費だけでなく、今後その場所で何年、どのような暮らしを続けたいのかまで含めて比較する必要があります。
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