(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になると、長年暮らしてきた家をこのまま維持するのか、より管理しやすい住まいへ移るのか、判断を迫られることがあります。築年数が古ければ修繕費もかさみますが、それでも住み慣れた家を選び、老後に合わせて改修する人もいます。

「そこまでお金をかけるなら引っ越したら?」子どもたちの反対

冬の朝、隆さん(仮名・79歳)が廊下へ出ると、足元から冷気が上がってきました。

 

「今日も寒いな」

 

妻の昌子さん(仮名・78歳)は、台所で暖房をつけながら答えました。

 

「お風呂も寒いしね。そろそろ何とかしないと」

 

夫婦が暮らしているのは、52年前に建てられた木造2階建ての戸建てです。

 

結婚した翌年に購入し、ここで2人の子どもを育てました。子どもたちはすでに独立し、現在は夫婦二人暮らし。年金は合わせて月約24万円です。

 

これまでも屋根や外壁、給湯器などは必要に応じて修繕してきました。しかし家そのものの古さは隠せません。

 

冬場は廊下や脱衣所が冷え込み、浴室には段差があります。和式だった部屋の敷居も高く、2階へ上がる階段は急です。

 

ある日、隆さんが浴室の入り口で足を引っかけたことをきっかけに、夫婦は大規模なリフォームを検討するようになりました。業者から提案されたのは、浴室とトイレの改修、廊下との段差解消、手すりの設置、1階部分の断熱工事、水回りの交換などです。

 

見積額は約1,200万円。金額を聞いた長男の直人さん(仮名・50歳)は驚きました。

 

「築50年以上なんでしょう? そこまでかけるなら、マンションに引っ越したほうがいいんじゃない?」

 

長女からも同じことを言われました。駅に近い中古マンションへ移れば、庭の手入れも不要になり、階段のない生活もできます。

 

夫婦も一度は住み替えを考えました。

 

実際に何軒か内見しましたが、昌子さんは帰宅するたびに、

 

「便利なのは分かるけど、ここを出たいとは思えないのよね」

 

と口にしました。

 

徒歩圏内にはスーパーも診療所もあり、近所には長年付き合ってきた友人もいます。庭仕事も、負担になる一方で昌子さんの楽しみの一つでした。

 

隆さんも、「家そのものが古いから」という理由だけで住み替えることに踏み切れませんでした。

 

内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、65歳以上の人の住居形態は「持家(一戸建て)」が79.8%、「持家(分譲マンション等の集合住宅)」が3.2%で、8割以上が持ち家に暮らしています。また、総務省『令和5年住宅・土地統計調査』では、75歳以上の世帯の持ち家率は82.4%です。高齢期になっても、長く暮らした持ち家に住み続ける人は多くいます。

 

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