「しばらく置いてほしい」突然帰ってきた娘と孫2人
夕方、インターホンが鳴り和夫さん(仮名・68歳)が玄関を開けると、長女の美紀さん(仮名・39歳)が大きなキャリーケースを持って立っていました。その横には、小学5年生と小学2年生の孫がいます。
「どうしたんだ、その荷物」
美紀さんは少し黙ったあと、
「離婚することになったの。しばらくここに置いてほしい」
と話しました。
和夫さんと妻の明子さん(仮名・66歳)は驚きました。娘夫婦の仲が良くないことは聞いていましたが、すでに別居を決めていたことまでは知りませんでした。
「とりあえず落ち着くまでいればいいよ」
明子さんはそう言い、かつて美紀さんが使っていた部屋を片づけました。
夫婦は年金月約22万円と、約2,800万円の貯蓄で暮らしています。住宅ローンは完済済み。子どもたちが独立してからは、食事も簡単になり、年に数回は夫婦で旅行へ出かけるなど、無理のない老後を送っていました。
ところが4人暮らしが始まると、家の中は一気ににぎやかになりました。朝は孫の朝食を用意し、学校へ送り出す。夕方には明子さんが宿題を見ながら夕食を作ります。
食費も増えました。牛乳やパンは数日でなくなり、肉や魚も夫婦二人だったころの量では足りません。光熱費も目に見えて増えていきました。
「最初は、孫と毎日会えるのがうれしかったんです。でも、1ヵ月、2ヵ月と続くと、生活そのものが変わってきました」
美紀さんは会社員として働いていましたが、離婚後の生活費を貯めたいという理由から、実家に入れる生活費は月3万円ほどでした。
半年ほど経ったころ、和夫さんが家計簿を見ながら言いました。
「最近、毎月赤字額が大きくなってないか?」
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月平均の実収入が25万4,395円、可処分所得が22万1,544円である一方、消費支出は26万3,979円です。平均的な高齢夫婦世帯でも、可処分所得だけでは消費支出を賄えていない状況がみられます。
