(※写真はイメージです/PIXTA)

資産形成の手段として不動産投資に関心を持つ人や、将来的に親から実家やアパートを相続する可能性がある人にとって、不動産にまつわる税金の知識は不可欠です。古くなった建物を解体して更地にしたり、新しい建物を建てたりするプロセスでは、様々な費用が発生します。今回は、令和7年5月20日に国税不服審判所(税金に関するトラブルを審査する国の機関)で下された裁決事例をもとに、建物の解体費用や立ち退き料が税務上どのように扱われるのか、その注意点について解説します。

審判所の判断:最初から「壊す目的」だったかが分かれ道

国税不服審判所は、税務署の主張を全面的に認め、地主の訴えを退けました。その根拠となったのが、税務上のルール(所得税基本通達38-1)です。

 

このルールでは、「土地(借地権を含む)を建物と一緒に取得した場合において、最初からその建物を壊して土地を利用する目的であることが明らかなときは、建物の取得代金や解体費用などは、すべて土地の取得費に含める」と定められています。 なぜなら、最初から壊すつもりで建物を買った人は、建物の価値そのものにお金を払ったのではなく、「建物を壊した後の更地としての価値」を手に入れるためにお金を払ったとみなされるからです。

 

審判所は、地主が和解前から保育園の設置を計画していた事実や、建物を取得した後すぐに住人に退去を求め、短期間で解体している事実を重視しました。これにより、「当初から建物を壊して借地権を利用する目的であったことは明らか」と判断されました。

 

その結果、建物の未償却残高、解体費用、立ち退き料に加えて、土地の正常な利用を回復するための裁判の弁護士費用までもが、すべて不動産所得の必要経費ではなく「借地権の取得費」に該当すると結論づけられたのです。

 

この裁決事例は、特殊な地主のトラブルに見えるかもしれませんが、私たちの身近な不動産取引にも直結する重要な教訓を含んでいます。

 

たとえば、中古の古家付きの土地を購入し、古家を解体して新しいマイホームや投資用アパートを建てようとする場合がこれに該当します。また、将来的に親から引き継いだ古い貸家の住人に立ち退き料を払い、更地にして活用しようとする場合にも、同様のルールが適用される可能性があります。

 

こうした場面において、「自分がお金を払ったのだから、当然その年の経費として申告できるだろう」と安易に考えていると、後から税務署に否認され、想定外の税金を請求される事態になりかねません。特に、費用が土地や借地権の取得費に算入されてしまうと、その不動産を手放す時まで経費として差し引くことができず、手元の資金計画が大きく狂う原因となります。

 

「建物を壊す目的での取得」とみなされるかどうかは、取得から解体までの期間や、事前の事業計画など、客観的な事実に基づいて厳格に判断されます。 将来に向けて不動産を活用した資産形成を考える際や、不動産の整理を行う際には、自己判断で処理を進めるのではなく、事前に税理士などの専門家に相談し、「支払う費用が税務上どのように扱われるか」を正確に把握しておくことが不可欠です。

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