(※写真はイメージです/PIXTA)

資産形成の手段として不動産投資に関心を持つ人や、将来的に親から実家やアパートを相続する可能性がある人にとって、不動産にまつわる税金の知識は不可欠です。古くなった建物を解体して更地にしたり、新しい建物を建てたりするプロセスでは、様々な費用が発生します。今回は、令和7年5月20日に国税不服審判所(税金に関するトラブルを審査する国の機関)で下された裁決事例をもとに、建物の解体費用や立ち退き料が税務上どのように扱われるのか、その注意点について解説します。

裁判上の和解から立ち退き、解体へ

事例の詳細を見る前に、まずは所得税の計算における「必要経費」と「取得費」の違いを理解しておく必要があります。この2つは、税務上の扱いにおいてまったく異なる性質を持っています。

 

不動産賃貸業などで毎年の利益(不動産所得)を計算する際、収入から差し引くことができるのが「必要経費」です。もしある費用が必要経費として認められれば、その年の利益が減るため、直ちに納める税金を安くする効果があります。

 

一方、「取得費」とは、土地や建物などの資産を手に入れるためにかかった費用のことです。取得費に算入された金額は、その資産を将来誰かに売却する時まで、原則として税金の計算上差し引くことができません(建物であれば減価償却という形で少しずつ経費にできますが、土地や借地権の場合は売却時まで経費化されません)。

 

つまり、同じようにお金を支払ったとしても、それが「必要経費」になるか「取得費」になるかで、手元に残るお金(キャッシュフロー)のタイミングが大きく変わってくるのです。納税者からすれば、できるだけ早く税金を減らす効果がある必要経費として計上したいと考えるのが一般的です。

 

今回の裁決事例は、まさにこの「経費か、取得費か」が争点となったケースです。

 

舞台となったのは、不動産賃貸業を営む地主(審査請求人)が所有する土地です。この土地には過去に借地権が設定されており、別の所有者名義の共同住宅(アパート)が建っていました。 地主は、この土地と隣接する土地を合わせて、保育園の敷地として活用したいと考えました。そこで借地権者との間で裁判を起こし、結果的に和解という形で、借地権とアパートの建物を買い取ることになりました。

 

建物を手に入れた地主は、住んでいた賃借人たちに立ち退き料(移転補償料)を支払って退去してもらい、建物を解体して更地にしました。そして予定通り、保育園を運営する会社へ土地の貸し出しを開始しました。

 

この一連の流れの中で、地主は和解にかかった弁護士費用、建物の解体費用、住人への立ち退き料などを支出しました。地主はこれらの費用や建物の未償却残高を、不動産所得の必要経費として確定申告を行いました。

 

しかし、これに対して税務署が更正処分を下します。税務署は「これらの費用はすべて不動産所得の必要経費にはならず、実質的に『借地権の取得費』に含めるべきだ」と指摘し、追加の税金を納めるよう命じたのです。地主はこれを不服として、国税不服審判所に審査を求めました。

 

 

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