昨年12月、2026年度(令和8年度)の税制改正大綱が公表され、不動産を活用した相続税対策の歴史において、過去最大級の転換点を迎えることとなりました。これまで資産家や経営者のあいだで“王道”とされてきた、収益不動産による資産圧縮スキームに事実上の終止符が打たれる内容となっています。特に相続直前の不動産取得による評価減や、不動産小口化商品を用いた節税を検討されている方にとって、今回の改正は極めてインパクトの大きいものです。本稿では、資産税および不動産税務を専門とする公認会計士の視点から、改正の核心である「5年ルール」の正体と、時価評価への完全移行がもたらす実務的な影響を、公認会計士の岸田康雄氏が解説します。
不動産小口化商品はさらに厳格化
今回の改正で、現物の貸付用不動産以上に厳しい措置が講じられたのが「不動産小口化商品」です。
現物不動産の場合、5年を超えて保有すれば従来どおり路線価ベースの評価となりますが、小口化商品については取得時期を問わず常に時価評価となります。これは、小口化商品が“実質的な金融商品”として節税目的で利用されてきた実態を重く見た結果と考えられます。
小口化商品の相続評価を決める「3つ」の基準
投資家の方は、運用会社から届く書類のどの数字が評価額になるのか、以下の優先順位で確認しておきましょう。
1.事業者が示す処分価格・買取価格:事業者が提示する適正な買い取り価格
2.売買実例価額:事業者が把握している直近の適正な取引事例
3.定期報告書の記載価格:運用報告書等に記載されている不動産鑑定評価額など
これらの情報が存在しない場合に限り、現物不動産の評価方法(80%ルール等)が準用されます。つまり、小口化商品は事実上「時価のほぼ100%」で課税されることを覚悟しなければなりません。
「課税の公平性」と最高裁判決…税制改正にメスが入ったワケ
この抜本的な改革の背景には、令和4年の最高裁判決(マンション節税裁判)があります。
この判決では、路線価による評価が実勢価格と著しく乖離している場合、税務署長が「鑑定評価」等に基づき再評価を行う権利(通達6項の適用)が認められました。
その後、区分所有マンションについては「マンション通達」により1室単位の評価方法が見直されましたが、「一棟所有の賃貸不動産」や「不動産小口化商品」は依然としてこの見直しの対象外でした。
今回の改正は、こうした“抜け穴”を包括的に塞ぐものです。区分所有マンションだけでなく、大型の一棟物件や小口化商品を含め、相続直前に不動産へ形を変え、相続直後に現金化するという“一瞬の資産移し替え”による租税回避を完全に封じ込める内容となっています。
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年度経済産業省中小企業庁「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継とM&A実務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業承継コンサルティング業務を提供している。
WEBサイト https://kinyu-chukai.com/
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=142
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