古巣への復帰で見えた「働くこと」の意味
隆司さんが古巣への復帰を決めるまでには、数週間かかりました。一度は自分から離れた会社です。戻れば、かつての部下や同僚にどう見られるのかという気まずさもありました。
しかし、家計の取り崩しを抑えたい気持ちだけでなく、社会とのつながりを取り戻したい思いも強くなっていました。
厚生労働省『高年齢者雇用状況等報告』によると、65歳までの雇用確保措置を講じている企業は多く、70歳までの就業機会確保に取り組む企業も増えています。高齢期の就労は、収入を得るためだけでなく、生活リズムや社会参加を保つ意味もあります。
隆司さんは、正社員の管理職として戻ったわけではありません。契約社員として週3日勤務し、若手社員の育成やプロジェクトの助言を担当する形です。
収入は現役時代の半分にも届きませんが、毎月の取り崩しを抑えられるようになり、生活にもリズムが戻りました。
最初は「出戻り」と見られることを気にしていた隆司さんですが、若手から相談を受けるうちに、自分の経験がまだ役に立つことを実感しました。責任の重い管理職ではなく、必要な場面で知識を伝える働き方は、以前よりも自分に合っていると感じています。
「早期退職を後悔しているわけではありません。ただ、完全に働かない生活が自分に合うとは限らなかったんです」
早期退職を考えるとき、資産額だけを見て判断するのは危険です。年金受給までの生活費、税金や社会保険料、住宅費、医療費、物価上昇、そして社会とのつながりまで含めて考える必要があります。完全に働かないか、現役時代と同じように働くかの二択ではなく、負担を抑えた形で働き続ける道もあるのです。
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