「最近、電話に出ないな」久しぶりの実家で気づいた異変
「母さん、今週の日曜日に行くからね」
長男の浩二さん(仮名・54歳)がそう電話をすると、母の節子さん(仮名・82歳)はいつも通り「わざわざ来なくても大丈夫よ」と答えました。
節子さんは夫を10年前に亡くし、一人暮らしをしています。年金は月約14万円、預貯金は約1,200万円。住宅ローンを完済した戸建てで暮らしていました。
スーパーへは徒歩15分ほど。近所にかかりつけの内科もあり、これまで日常生活に大きな支障はありませんでした。
浩二さんが実家を訪れるのは月に1回ほどです。ただ、ここ数週間は気になることがありました。
以前なら夕方に電話をすればすぐに出る母が、折り返してくるまで数時間かかることが増えたのです。「昼寝してた」「テレビの音で聞こえなかった」と説明するため、浩二さんも深く考えていませんでした。
ところが、日曜日に実家へ着くと、玄関の郵便受けに何通ものチラシや封筒がたまっていました。
「なんだか嫌な予感がするな……」
鍵を開けて中に入った浩二さんは、玄関で足を止めました。
廊下には宅配便の空き箱がいくつも置かれ、靴も出しっぱなしです。以前の節子さんは、来客がなくても玄関だけはきれいにしていました。
「母さん?」
声をかけると、節子さんは居間から出てきました。体調が悪そうには見えません。
「どうしたの、急に」
「今日行くって電話しただろう?」
「そうだったっけ?」
冷蔵庫を開けると、同じ種類のヨーグルトが10個以上あり、賞味期限を過ぎた総菜も残っていました。一方、野菜や肉はほとんどありません。
テーブルには未開封の郵便物が積まれ、その中には公共料金のお知らせも混じっていました。
「これ、見てないの?」
「あとでやろうと思ってたのよ」
節子さんは笑って答えました。浩二さんが最も驚いたのは、母自身がそれほど困っている様子を見せなかったことです。
「片づければ済む話」だと思いかけた浩二さんでしたが、以前との違いが気になりました。
