(※写真はイメージです/PIXTA)

孫にお小遣いやプレゼントを渡すことは、多くの祖父母にとって喜びの一つです。喜ぶ顔を見れば、つい財布のひもが緩むこともあるでしょう。しかし、それが習慣化すると、年金生活の家計を圧迫することがあります。かわいさから始まった支出が、いつの間にか負担に変わってしまうケースも少なくありません。

「これまで断れなかったけど…」家族で決めた新しい線引き

下の孫の誕生日のこと。娘から「今年はスマートフォンを買い替えたいみたいで」と相談され、恵子さんは費用の一部として5万円を出しました。その翌週、上の孫からも修学旅行の小遣いを頼まれます。

 

「おばあちゃんなら分かってくれると思って」

 

そう言われたとき、恵子さんは返事に詰まりました。分かってあげたい気持ちはあります。しかし、その月の支出はすでに大きく膨らんでいました。

 

夜、通帳を開いた恵子さんは、貯蓄が思っていたより早く減っていることに気づきます。1,400万円という数字は安心材料でしたが、毎月少しずつ取り崩し、孫への支出が重なれば、将来の医療費や介護費に不安が残ります。

 

厚生労働省の介護保険制度では、介護が必要になった場合、要介護認定を受けて介護サービスを利用できますが、自己負担や施設費、日用品費などが発生します。元気なうちには見えにくい支出も、高齢期には急に必要になることがあります。

 

恵子さんは、娘に話すことを決めました。

 

「孫たちがかわいいのは変わらない。でも、これからは毎回お金を渡すのはやめたいの」

「喜ぶ顔を見ると、断れなかったけど…」

 

恵子さんの言葉に、娘は申し訳なさそうにうつむきました。娘自身も、母が出してくれることに甘えていたと認めました。

 

その後、家族で話し合い、孫へのお小遣いは誕生日とお正月だけにすることにしました。部活動や進学に関わる大きな費用は、まず親である娘夫婦が負担し、どうしても必要な場合だけ事前に相談する。遊びのためのお金は、孫自身の小遣いやアルバイトで考える。そう決めたのです。

 

最初は少し気まずさもありましたが、恵子さんは以前より落ち着いて孫を迎えられるようになりました。お金を渡すことではなく、一緒に食事をすること、学校の話を聞くこと、成長を見守ることに気持ちを向けられるようになったからです。

 

孫への支援は、祖父母にとって喜びでもあります。しかし、年金生活のなかで無理を続ければ、自分の老後を支えるお金まで削ってしまいます。大切なのは、すべてを断つことではなく、できる範囲を家族で共有することです。

 

恵子さんは今も、孫が来る日を楽しみにしています。ただし、もう通帳を開いて身構えることはありません。

 

「お金を渡さなくても、おばあちゃんでいられるんですね」

 

そう笑う恵子さんの表情は、以前より少し穏やかでした。

 

 

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