「孫のため」…積み重なった親心と息子夫婦の違和感
浩一さん(仮名・74歳)と妻の節子さん(仮名・72歳)は、築42年の団地で暮らしています。
夫婦の年金収入は月22万円ほど。贅沢はできませんが、住宅ローンはなく、二人で静かな生活を送っていました。
楽しみは、車で30分ほどの場所に住む長男家族との交流です。
小学3年生と保育園児の孫がおり、節子さんは季節ごとに手料理を届けたり、子ども服を買ったりしていました。
「お母さん、また荷物持ってきたの?」
息子の健太さん(仮名)は苦笑しながらも受け取ってくれました。そのため夫婦は、自分たちが歓迎されていると思っていました。
ところが、少しずつ息子夫婦との間に温度差が生まれていきます。
節子さんは孫の体調を心配するあまり、「薄着じゃない?」「その習い事は忙しすぎない?」と口を出すことが増えました。浩一さんも住宅ローンや教育費の話になると、「もっと貯金したほうがいい」「その出費は必要なのか」と助言するようになります。
二人に悪気はありません。息子一家のことが心配だっただけです。しかし息子の妻は次第に表情を曇らせるようになりました。
ある日、孫の運動会のあと、帰宅した健太さんから電話がありました。
「父さん、母さん、少し話があるんだ」
珍しく真剣な声でした。
「何かあったのか?」
浩一さんが尋ねると、健太さんはしばらく言葉を選んだあと、こう続けました。
「悪く思わないでほしいんだけど、子育てやお金のことにあまり口を出さないでほしい」
夫婦は驚きました。
「そんなつもりじゃなかった」
節子さんはそう答えましたが、健太さんは静かに言いました。
「分かってる。でも、妻もかなり気を遣っているんだ」
その場は穏やかに終わったものの、夫婦はどこか納得できませんでした。
「親が心配するのは当たり前じゃない…」
その後も何気ない一言を積み重ねていきます。
孫の進学先への意見、旅行の計画への口出し、休日の過ごし方への助言。どれも夫婦にとっては善意でしたが、息子夫婦にとっては干渉と感じられていました。
そしてある日、一通のメッセージが届きます。
「しばらく距離を置きたい」
「嫌いになったわけじゃない。ただ、お互い少し距離が必要だと思う」
と書かれていました。
節子さんは何度も画面を見返しました。
「私たち、そんなに悪いことした?」
