(※写真はイメージです/PIXTA)

住宅ローンや教育費、親への援助、保険料などの支出が重なれば、収入があっても思うように資産形成が進まないケースは少なくありません。家計管理を配偶者に任せきりにしていると、定年が近づいたころに初めて、想像していた老後資金との大きな差に気づくこともあります。

「稼いでいたのに残らなかった」…定年前に見えた家計の現実

その夜、亮平さんは由美子さんを責める言葉を何度も飲み込みました。家計を任せきりにしてきたのは自分です。子どもの進学も、親への援助も、家の維持も、どれも不要な支出だったとは言えません。

 

ただ、何も知らされないまま「大丈夫」と思い込んでいたことへの悔しさは残りました。

 

「月3万円で我慢してきた結果がこれか」

 

思わずそうこぼすと、由美子さんは目を伏せました。

 

「私も、ちゃんと共有すればよかった。でも、あなたも聞こうとしなかったでしょう」

 

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』でも、老後の生活について心配している世帯は多く、その理由として「十分な金融資産がない」「年金や保険が十分ではない」「物価上昇への不安」などが挙げられています。老後資金への不安は、収入が低い世帯だけの問題ではありません。

 

亮平さん夫婦は、まず家計の棚卸しを始めました。住宅ローンの残高、退職金の見込み、年金見込額、保険、毎月の固定費、親への援助の有無。数字を書き出すと、何を見直すべきかが少しずつ見えてきました。

 

再雇用後の収入は大きく下がる見込みです。だからこそ、定年前のいまから支出を小さくする必要がありました。使っていない保険やサブスクを整理し、車の買い替えを先送りし、親への援助についてもきょうだいを交えて話し合うことにしました。

 

大切なのは、誰か一人に家計を任せきりにしないことです。通帳を見ないまま安心するのではなく、夫婦で定期的に数字を確認し、退職後の生活を具体的に考えることです。

 

「知らないまま定年を迎えるよりはよかった」

 

そう自分に言い聞かせながら、亮平さんは家計簿を開きました。37年働いた結果を嘆くだけでなく、これからの暮らしをどう守るか。夫婦の話し合いは、そこからようやく始まったのです。

 

 

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