(※写真はイメージです/PIXTA)

地方の実家を離れて都会でキャリアを積む人が増える一方で、遠距離ゆえに親の異変に気付けず、悲劇に直面するケースが後を絶ちません。親子仲が決して悪くなくても、日々の仕事の忙しさや「まだ元気だから心配させたくない」という親側の遠慮から連絡が途絶えがちになり、結果として深刻な事態を招いてしまう実態が存在します。本記事ではAさんの事例から、別居する高齢親への万が一の備えについて、社会保険労務士法人エニシアFP共同代表の三藤桂子氏が、現代の家族の在り方を紐解いていきます。※事例はプライバシー保護のため、一部脚色しています。

思わぬ税務リスク

しかしこのあと、ファイナンスの現実がAさんに重くのしかかることになります。手つかずで残された「毎月10万円の仕送り」が、税務上で大きな問題となったのです。

 

国税庁のルールでは、親子や夫婦など扶養義務者間で行われる仕送りは原則として「非課税」とされています。しかしこれには、「必要な生活費として、その都度消費されること」という条件があります。

 

Aさんの母のように、仕送りに一切手をつけず口座に貯め込んでいた場合、それは生活費ではなく「通常の贈与」とみなされる可能性があります。Aさんは毎月10万円、年額にして120万円を送っていました。贈与税の基礎控除額は「年間110万円」であるため、それを超えた部分に対して過去に遡って贈与税が課税されるリスク、あるいは相続時に税務署から「名義預金(実質的にはAさんの財産、あるいは母の相続財産)」として指摘を受け、ペナルティの対象になるリスクが発生しかねません。

 

親を想う優しい気持ちから生まれた月10万円の仕送りが、結果として税務上のトラブルを招いてしまう――。こうした悲劇を防ぐためにも、やはり事前のコミュニケーションが不可欠でした。

親子で共有する「エンディングノート」

エンディングノート自体には、遺言書のような法的効力はありません。しかし、身内と離れて暮らしているからこそ、万が一の事態が起きたときに、その人の想いや意思を遺された家族へ伝えるための有効な手段となるでしょう。事前に自分の希望を整理しておくことは、残された家族の精神的な負担を軽減し、親族間でのトラブルを未然に防ぐことにもつながります。

 

特に近年では、パソコンやスマートフォンの中に残されたデータや口座情報といった「デジタル遺品」の取り扱いがわからず、残された家族が相続や解約手続きでトラブルに発展するケースが急増しています。

 

離れて暮らす親の気持ちを知り、残された子が前を向いて生きていくためにも、生前からエンディングノートをコミュニケーションツールとして親子で共有しておくことは、非常に重要な意味を持つのではないでしょうか。

 

〈参考〉

内閣府ホームページより「孤立死者数の推計方法等について」

https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/wg/r6/pdf/houkokusyo.pdf

厚生労働省:孤立死防止対策

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000034190.pdf

 

 

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

共同代表

 

 

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