(※写真はイメージです/PIXTA)

地方の実家を離れて都会でキャリアを積む人が増える一方で、遠距離ゆえに親の異変に気付けず、悲劇に直面するケースが後を絶ちません。親子仲が決して悪くなくても、日々の仕事の忙しさや「まだ元気だから心配させたくない」という親側の遠慮から連絡が途絶えがちになり、結果として深刻な事態を招いてしまう実態が存在します。本記事ではAさんの事例から、別居する高齢親への万が一の備えについて、社会保険労務士法人エニシアFP共同代表の三藤桂子氏が、現代の家族の在り方を紐解いていきます。※事例はプライバシー保護のため、一部脚色しています。

「独居の母」への月10万円の仕送り

父が亡くなるまで、Aさんの両親は小さな商店を営んでいました。お店の切り盛りのかたわら、裏の畑で自家製の野菜を作り、質素倹約の生活を続けてきたのです。しかし父の死後、その商店も閉めざるを得なくなり、母は年金だけを頼りに暮らすこととなりました。

 

母が受け取れる国民年金は月額で約5万円という厳しい金額です。これでは日々の生活費や医療費を賄うだけで手一杯になってしまいます。そこで、昇進を重ねて月収60万円を得ていたAさんが、毎月10万円の仕送りをすることに決めました。

 

その後、Aさんは管理職へと昇進し、任される責任とともに仕事は一層忙しさを増していきます。仕事が終わって帰宅が夜遅い時間になると、いまから電話をかけたらもう寝ている母を起こしてしまうかもしれないと躊躇するようになり、実家への連絡回数も徐々に減っていったのです。

 

ご近所さんからの悲しすぎる知らせ

Aさんが55歳のときのこと、様子見を頼んでいたご近所さんから、Aさんの携帯電話に連絡が入りました。

 

ご近所さんは質の悪い風邪を引いてしまい、1週間以上も寝込んでいたそうです。そのあいだ、Aさんの母の様子を見にいくことができずにいました。ようやく体調が戻って訪ねたところ、部屋の一室で冷たくなって倒れている母を発見したというのです。すでに息を引き取っており、死因は病死でした。

 

ショックでAさんは言葉を失いました。父に続き、最愛の母の最期にすら立ち会うことができず、誰にも看取られずに孤独死させてしまったという後悔と申し訳なさが、彼女の胸を締め付けます。

増加する「おひとり様」の孤独死…遺品整理で見つけた手帳

警察庁刑事局が公表した統計データによると、令和6年における警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者のなかで、生前に社会的に孤立していたことが強く推認される「死後8日以上」を経過して発見された遺体は、2万1,856件にものぼります。また、参考値として「死後4日以上」を経過していたケースでは、3万1,843件です。

 

Aさんの家庭のように、親子仲が悪いわけでなくても、離れて暮らしていることや、親自身が「住み慣れた家で暮らしたい」と願う気持ちが発端となり、結果として痛ましい孤独死を招いてしまうケースは後を絶ちません。

 

葬儀後、Aさんは遺品整理を行うために実家へと戻りました。片付けを進めるなかで、引き出しから栗色の手帳を見つけます。母の日記かと、中を開いてみると、Aさんはその場で号泣してしまいました。

 

その栗色の手帳は、万が一のときに備えて書き残された「エンディングノート」でした。中には、古い印鑑や通帳の隠し場所、お墓の希望などが記載されていました。そしてページの後半には、娘への思いが綴られていたのです。

 

[娘は頑張り屋さんで、自分の夢を叶えてくれて嬉しい。なかなか会えないのは寂しいけれど、いつもあなたのことを一番に応援しています]

 

「手帳には、通帳が挟んでありました。私からの仕送りが、使われることなくそのまま全額残されていたんです。それを見た瞬間、涙が止まらなくなって、その場に崩れ落ちてしまいました。母は、最後まで自分にお金を使えない人でした」

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※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

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