(※写真はイメージです/PIXTA)

収入が高くても、家計の全体像を夫婦で共有していなければ、思わぬところで資産が減っていることがあります。特に定年前後は、退職金や老後資金への不安が強まり、「少しでも増やしたい」という気持ちが先走りやすい時期です。家族のためを思った行動が、結果として家計を大きく揺るがすこともあります。

「うちは大丈夫だよな」…定年前に見えた家計の違和感

一郎さん(仮名・59歳)は、メーカー勤務の会社員です。年収は約820万円。管理職として忙しく働き、家計管理は長年、妻の由紀子さん(仮名)に任せてきました。

 

一郎さんの小遣いは月3万円。昼食代や交際費の一部をそこから出し、その他の支払いは妻が管理する口座から行っていました。

 

子ども2人はすでに独立。住宅ローンも数年前に完済しています。

 

「これだけ働いて節制してきたんだから、老後はそれなりに余裕があるはずだ」

 

一郎さんはそう思っていました。

 

ところが、会社で定年後の再雇用制度の説明を受けたころから、不安が出てきます。再雇用後は収入が下がります。退職金が入るとはいえ、年金受給までの期間や、その後の生活費を考えると、家計の確認が必要でした。

 

ある夜、一郎さんは由紀子さんに聞きました。

 

「今、貯金ってどのくらいある?」

 

由紀子さんは一瞬、言葉に詰まりました。

 

「ちゃんと話したほうがいいかもしれない」

 

そう言って差し出したのが、数年分の家計簿でした。

 

一郎さんは、最初は軽い気持ちでページをめくりました。食費、光熱費、固定資産税、保険料。そこまでは想定内でした。

 

しかし、途中から見慣れない項目が何度も出てきます。

 

「運用資金」

「追加出資」

「セミナー費」

「紹介者手数料」

 

金額は10万円、30万円、多い月には100万円近くにのぼっていました。

 

「何だよ、これ」

 

由紀子さんは目を伏せました。

 

「老後資金を増やせるって言われたの。知人に紹介されて……」

 

一郎さんは言葉を失いました。

 

話を聞くと、由紀子さんは数年前、知人から「元本はほぼ守られる」「毎月分配金が入る」と説明され、海外不動産関連をうたう投資話に資金を出していました。最初の数カ月は分配金らしき入金があり、安心して追加出資したといいます。

 

「あなたに言ったら、反対されると思った」

 

由紀子さんはそう言いました。

 

「俺の給料はどこに消えた?」

 

一郎さんの声は震えていました。

 

貯蓄はゼロではありません。しかし、想定していた老後資金からは大きく減っていました。

 

金融庁は、投資についてはリスクとリターンの関係を理解し、内容が分からない商品には慎重になるよう注意を促しています。特に「必ずもうかる」「元本保証」といった説明には注意が必要です。

 

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