契約書には書かれていた…「安心」の中にあった見落とし
隆夫さんは、施設側に説明を求めました。担当者は、契約時の重要事項説明書を取り出し、月額利用料に含まれるサービスと、別料金になるサービスを一つずつ説明しました。
居室の家賃相当額、管理費、食費は基本料金に含まれています。一方で、個別の付き添い、規定回数を超える洗濯、特別な介助、医療機関への同行、介護用品などは、内容によって追加費用が発生する仕組みでした。
「契約時にもご説明しています」
担当者はそう言いました。
隆夫さんは、反論できませんでした。確かに書類には記載がありました。しかし入居時は元気で、追加介助が必要になる生活を具体的に想像できていなかったのです。
厚生労働省の資料でも、有料老人ホームでは契約書、重要事項説明書、パンフレットなどで料金の整合性を確認することが重要とされています。入居時費用や月額利用料だけでなく、介護度が上がった場合、医療が必要になった場合、追加サービスを利用した場合の負担を確認しておく必要があります。
介護保険サービスを利用する場合も、原則として所得に応じた自己負担があります。さらに、介護保険の対象外となる日用品、理美容、医療費、個別対応のサービスなどは、別途負担になることがあります。
隆夫さん夫婦は、子どもたちを交えて施設と話し合いました。今後も同じ暮らしを続けるのか、サービスの利用を見直すのか、より費用を抑えられる施設を検討するのか。簡単に結論は出ませんでした。
「貯蓄6,500万円あれば大丈夫だと思っていました。でも、毎月50万円近く出ていく生活が続けば、話は変わります」
夫婦は、まず追加サービスの内容を見直しました。必要な支援と、家族が対応できることを分け、通院同行の一部は長女が担うことにしました。施設での生活を続ける一方で、今後介護度がさらに上がった場合の費用も試算してもらいました。
高級老人ホームは、安心で快適な暮らしを支えてくれる選択肢の一つです。しかし、その安心は「すべて込み」という意味ではありません。
入居時に元気であっても、5年後、10年後には介護や医療の必要度が変わります。そのとき、どのサービスが月額利用料に含まれ、どこから追加費用になるのかを理解していなければ、思わぬ請求に驚くことになります。
老後の住まい選びでは、今の支払い能力だけでなく、体調が変わった後の費用まで見ておくことが大切です。
「入れるか」だけでなく、「払い続けられるか」。その視点を持たなければ、憧れの住まいが、老後資金を揺るがす場所になってしまうこともあるのです。
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