「避けていたけれど…」家計に響く書類の見落とし
後日、和彦さんはFPの助言を受け、年金事務所や税務署に相談しました。
そこで説明されたのは、公的年金にも所得税がかかる場合があり、扶養親族等申告書を提出することで、扶養控除などが源泉徴収に反映されることがあるという仕組みでした。
日本年金機構によると、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」は、源泉徴収の対象となる年金受給者に送付され、配偶者控除や扶養控除などを受ける際に必要な書類です。各種控除に該当する場合は、内容を確認して期限内に提出することが求められています。
和彦さんの場合、同居する長女の収入状況によっては、扶養控除の対象になる可能性がありました。提出漏れや記入漏れがあった年については、確定申告などで税額を確認できる場合もあります。住民税についても、自治体に相談することで対応が必要かどうかを確認できます。
総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得約11.8万円に対し、消費支出は約14.8万円で、平均では毎月約3.0万円の不足となっています。限られた年金で暮らす世帯にとって、税金や保険料の負担を正しく把握することは、家計を守るうえで重要です。
年金関係の書類が重要になるのは、扶養控除だけではありません。たとえば、厚生年金に加入したまま働きながら年金を受け取る場合には、「在職老齢年金制度」によって年金額が調整されることがあります。日本年金機構によると、令和8年3月以前は、総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が51万円を上回る場合、年金額の全部または一部が支給停止されていました。令和8年4月以降は、この基準額が65万円に見直されています。
年金が減った、税金が多い、振込額が思ったより少ない。そう感じたとき、通知書や申告書を確認すれば、理由が分かることがあります。
和彦さんはそれ以来、届いた書類をすぐに捨てないようにしました。分からない言葉があれば年金事務所に聞き、税金に関わる部分は税務署や自治体に確認する。長女にも「一緒に見てほしい」と頼むようになりました。
「難しいからと避けていたけれど、生活に直結することだったんですね」
公的年金は、老後の家計を支える大切な収入です。しかし、年金額だけを見ていれば安心というわけではありません。扶養親族の有無、働き方、税金、保険料、住民税などによって、実際の負担は変わります。
毎年届く書類は、単なるお知らせではなく、家計を守るための重要な手がかりです。見落としや出し忘れによって、不要な税負担が生じたり、制度の変化に気づかなかったりすることもあります。
「いつもの書類だから」と放置する前に、一度中身を確認する。その小さな行動が、老後の暮らしを守ることにつながるのかもしれません。
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