「また年金の書類か」…読まずにしまっていた青色の封筒
和彦さん(仮名・69歳)は、会社員として長く働いたあと、65歳で退職しました。現在は老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせ、月18万円ほどを受け取っています。
妻を亡くしてからは、40代の長女と二人暮らしです。長女は体調を崩して仕事を辞め、現在はほとんど収入がありません。食費や光熱費、固定資産税、通院費などは、和彦さんの年金とわずかな貯蓄でまかなっていました。
「年金が18万円あるなら、何とかなると思っていたんです」
しかし、物価上昇の影響もあり、家計には余裕がありませんでした。スーパーで買うものを減らし、エアコンの使用時間を短くし、外食はほとんどしない。それでも月末になると、通帳の残高を見てため息が出ました。
そんな和彦さんのもとには、毎年秋ごろ、日本年金機構から青色の封筒が届いていました。
中に入っていたのは「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」。年金から源泉徴収される所得税について、扶養親族などの控除を受けるために必要な書類です。
しかし、和彦さんはその意味をよく理解していませんでした。
「年金額のお知らせか何かだと思って、ちゃんと読んでいませんでした。難しい言葉が多くて、後で見ようと思ってそのままにしていたんです」
ある年は提出し、ある年は出したかどうかも覚えていない。妻が生きていたころは、こうした書類を一緒に確認していましたが、亡くなってからは封筒を開けることさえ面倒に感じるようになっていました。
転機が訪れたのは、市の相談会でファイナンシャルプランナーに家計を見てもらったときでした。収入と支出を説明したあと、FPは和彦さんに尋ねました。
「同居されている娘さんの収入は、年間でどのくらいですか?」
「ほとんどありません。今は私の年金で暮らしています」
そう答えると、FPは少し表情を変えました。
「それなら、娘さんが扶養控除の対象になる可能性があります。年金機構から届く扶養親族等申告書は提出していますか?」
和彦さんは、すぐには答えられませんでした。
「青い封筒なら、毎年来ていた気がします。でも、ちゃんと書いたかどうか……」
帰宅後、和彦さんは引き出しを探しました。古い通知書や領収書の束の中に、折りたたまれた青色の書類が残っていました。
「捨てなくてよかった……」
そうつぶやきながら読み返すと、そこには扶養親族に関する記入欄がありました。
