「老後のためのお金」と「使うお金」のバランスの難しさ
厚生労働省のデータによると、日常生活に制限のない期間を示す「健康寿命」は、男性が72.57歳、女性が75.45歳(2022年)。65歳で定年を迎えてから、心身ともに健康で元気に動き回れる期間は、私たちが想像している以上に短いものです。
さらに、共働き世帯が全体の約7割を占めるようになった(総務省「労働力調査」)一方で、働く母親へのサポート体制は未だ十分とは言えません。核家族化が進み、地域とのつながりも薄れる中で、初めての育児に孤立してしまう親は少なくないのです。
その結果、親世代の介護だけでなく、「メンタルを崩した我が子のサポート」や「孫のケア」という新たな負担が、時間の融通が利くシニア世代(特に動ける祖母側)に集中してしまうケースが増えています。
老後の安心を求めて蓄えた資産があっても、それを自由に使えるとは限りません。恵子さんの経験は、老後に備えてお金を蓄えることと、その時にしかできないことをするバランスの難しさを物語っています。
しかし、見方を変えれば、恵子さんが必死に貯め込んだ資産があるからこそ、経済的な不安なく、大切な娘と孫のそばに駆けつけ、寄り添うことができているのもまた事実です。
自分のために使うはずだったお金は、形を変えて家族の未来を守ることにつながっていく――。思い描いたものとは違っても、それもまた、一つの老後の姿なのかもしれません。
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