〈月収35万円〉42歳係長、業績悪化で“給与カット”を通告され猛抗議も…「嫌なら辞めろ」と一蹴。給与明細の「役職手当:0円」に愕然【社労士が「労働条件の不利益変更」を解説】

〈月収35万円〉42歳係長、業績悪化で“給与カット”を通告され猛抗議も…「嫌なら辞めろ」と一蹴。給与明細の「役職手当:0円」に愕然【社労士が「労働条件の不利益変更」を解説】

都内の専門商社で係長として働くセイヤさん(仮名・42歳)は、妻と2人の子供を育てる一家の大黒柱です。ある日、会社の業績悪化を理由に、翌月の給与明細から「役職手当:5万円」が突然0円に。総支給額が35万円から30万円へ激減し、抗議に向かうも「嫌なら辞めろ」と突き放されてしまいます。労働者の同意のない一方的な減給は許されるのでしょうか。社会保険労務士の内海正人氏が解説します。

【社労士が解説】会社の一方的な減給(不利益変更)の違法性

セイヤさんのように、会社から「業績不振だから」「嫌なら辞めろ」といわれ、一方的に給与や手当をカットされるケースはあとを絶ちません。

 

では、法的に見て、会社が労働者の同意を得ずに給与を下げることは許されるのでしょうか?

 

結論からいうと、会社が労働者の同意を得ることなく、一方的に給与や手当を引き下げる行為は、原則として「違法(無効)」となります。

 

1. 労働契約法に定められた「不利益変更禁止の原則」

労働条件(給与や休日など)は、労働者と会社との「合意」によって成り立つものです。そのため、会社が労働者に不利になるように労働条件を一方的に変更することを「労働条件の不利益変更」と呼びます。労働契約法第9条には、以下のように明記されています。

 

労働契約法第9条(労働条件の変更)

労働者及び使用者は、合意によって労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

 

つまり、「合意がない変更は認められない」のが大原則です。いくら業績不振という理由があっても、会社が独断で給与を引き下げることはできません。

 

2. 就業規則を改定すれば減給できるのか?

「うちは就業規則を変えたから問題ない」と会社が主張してくるケースもあります。労働契約法第10条では、就業規則の変更によって労働条件を不利益に変更する場合、その変更が「高度の合理性」を有している必要があると定めています。

 

この「合理性」が認められるためのハードルは非常に高く、単に「赤字だから」「売上が下がったから」という理由だけでは不十分です。

 

・経営危機を乗り越えるために、減給以外の手立て(経費削減や役員報酬のカットなど)を尽くしたか

・減給の程度が社会通念上、妥当な範囲か(いきなり数万円も下げるのは行き過ぎではないか)

・労働組合や従業員代表と十分な話し合い(代償措置の検討など)を行ったか

 

これらを総合的に判断するため、セイヤさんのケースのように「事前の説明も話し合いもなく、いきなりカット」というのは、合理性があるとは到底いえません。

 

3. 「役職手当」のカットに違法性はあるか?

ここで重要なのは、セイヤさんの役職(係長)そのものが剥奪されたわけではないという点です。もし、能力不足や不祥事によって「係長から平社員に降格」となり、それに伴って役職手当が消えるのであれば、その降格処分自体が妥当であれば適法となる可能性があります。

 

しかし、今回のセイヤさんは「係長の職務と責任はそのままなのに、手当だけがカットされた」状態です。これは実質的な基本給の引き下げと同義であり、法的な正当性は極めて低いといわざるを得ません。

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