「年に何度も来れば元は取れる」…退職後の夢だった山の別荘
康夫さん(仮名・70歳)は、65歳で会社を退職したあと、妻の美智子さん(仮名・68歳)と山あいの別荘を購入しました。
現役時代から積み立ててきた貯金の一部を使い、ローンは組みませんでした。自宅は持ち家で、夫婦の年金もあり、当時は「多少大きな買い物をしても大丈夫」と考えていました。
「夏は涼しいし、秋は紅葉がきれい。孫たちも連れて来られる。年に何度も行くと思っていたんです」
最初の1年は、確かに楽しい時間が続きました。庭でバーベキューをし、近くの温泉に入り、朝は鳥の声で目を覚ます。美智子さんも「買ってよかったね」と笑っていました。
ところが、2年目から少しずつ足が遠のきます。
自宅から別荘までは車で3時間以上。若いころなら気にならなかった距離も、70歳を前にすると負担になりました。冬は路面凍結が怖く、夏は草刈りや虫対策が必要です。行くたびに掃除から始まり、帰る前には戸締まりや水回りの確認に追われました。
「休みに行っているはずなのに、着いた瞬間から作業なんです」
さらに、管理費、固定資産税、火災保険料、水道光熱費、浄化槽の点検費、屋根や外壁の補修費がかかりました。使っていない月でも、支払いは止まりません。
総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対し、消費支出は約26.4万円で、平均では毎月約4.2万円の不足となっています。康夫さん夫婦も、日々の生活費に加え、別荘の維持費を貯蓄から補う月が増えていきました。
「買ったときは、購入価格ばかり見ていました。でも本当に負担になったのは、持ち続けるお金でした」
