(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親が老人ホームに入居すると、家族はひとまず肩の荷が下りたように感じることがあります。食事、入浴、見守り、服薬管理など、在宅では家族だけで担いきれなかったことを施設が支えてくれるからです。しかし、入居後の費用は、月額利用料だけで終わるとは限りません。介護保険の自己負担、医療費、日用品費、理美容代、通院付き添い費など、細かな支出が重なっていきます。

請求書に並んでいた“母の老い”の記録

母が安全に暮らすために必要なお金であることは分かっています。紙おむつも、通院も、髪を整えることも、日々の生活には欠かせません。

 

それでも、請求書を見ていると、母の老いが数字になって突きつけられるようでした。

 

「紙おむつ代が増えている月を見ると、母の状態が進んでいるのかなと思ってしまうんです」

 

文江さんは、入居当初よりも歩く距離が短くなり、介助が必要な場面も増えていました。施設からの書類には、食事量や体調の記録も添えられていました。

 

洋子さんにとってその請求書は、母の生活が少しずつ変わっていることを知らせる記録でもあったのです。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得が月11万8,465円、消費支出が月14万8,445円となっており、平均では毎月赤字です。高齢期には、年金だけで生活費や医療・介護関連費をすべてまかなうことが難しいケースもあります。

 

洋子さんは、施設相談員に改めて費用の内訳を確認しました。

 

「何が毎月固定で、何が状態によって増えるのかを知りたいんです」

 

相談員は、紙おむつ代や通院付き添い費、医療費は月によって変動すること、介護度や体調の変化によって必要な支援も変わることを説明してくれました。そのうえで、負担限度額認定や高額介護サービス費など、利用できる制度がないか自治体にも確認するよう勧められました。

 

洋子さんは、母の年金だけで足りない月は、自分が補うことにしました。ただし、感情だけで抱え込まないよう、毎月の費用を表にして、兄弟とも共有することにしました。

 

日用品、医療、通院、理美容、介護用品。どれも母がその人らしく暮らすために必要なお金でした。

 

洋子さんが請求書を見て凍りついたのは、金額だけが理由ではありません。そこに並んでいた細かな項目が、老いながら生活を続けるために必要な支えの多さを、静かに物語っていたからです。

 

 

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