(※写真はイメージです/PIXTA)

相続は、残された財産を分ける手続きであると同時に、亡くなった人がどのように晩年を過ごしたのかを知る時間でもあります。昔から「資産家」と言われていた家でも、長い老後の生活費や医療費、介護費、不動産の維持費によって、財産が大きく減っていることがあります。家族の記憶の中の資産額と、実際の残高が一致するとは限りません。

「資産がある家」のはずが…残っていたのは老後の支払い記録

浩二さんたちは資料を整理するうちに、祖母の晩年にかかった費用の大きさを知ることとなりました。

 

有料老人ホームの入居費、月額利用料、医療費、差額ベッド代、通院時の介護タクシー代。さらに、古い自宅の固定資産税や修繕費も続いていました。

 

不動産は、持っているだけで安心とは限りません。

 

古い建物がある土地は、維持管理や解体にも費用がかかります。共有名義や境界確認の問題があれば、すぐに売却できるとも限りません。

 

「資産がある=自由に使える現金がある、ではないんだと初めて分かりました」

 

浩二さんはそう振り返ります。

 

相続財産は、見た目の金額だけでは判断できません。土地や建物の評価額が高くても、納税資金や維持費が必要になることがあります。反対に、預貯金が少なく見えても、その背景には本人の長い療養生活や介護費用がある場合もあります。

 

文子さんの場合も、贅沢をして財産を使い果たしたわけではありませんでした。90歳まで生きる中で、必要な支出が積み重なっていたのです。

 

「祖母は資産を残さなかったのではなく、自分の老後を支えるために使っていたんだと思いました」

 

相続人たちは、税理士に相談しながら財産目録を作成しました。預貯金、不動産、有価証券、未払い費用、葬儀費用。数字を一つずつ整理していく作業は、期待していた遺産を確認する時間ではなく、祖母の晩年をたどる時間でもありました。

 

国税庁の同資料では、令和5年分の相続財産の構成比として、現金・預貯金等、土地、有価証券、家屋などが示されています。相続では、通帳の残高だけでなく、不動産や金融資産、債務まで含めた全体像を確認することが欠かせません。

 

相続には、介護、医療、住まい、家族との距離、そして本人がどう生きたかが表れます。

 

「資産家一家」という言葉は、親族の中でいつの間にか一人歩きしていました。しかし実際に残っていたのは、想像していた巨額の現金ではなく、長い老後を支えるために使われたお金の記録でした。

 

 

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